(639)ロードバイクと共に三重県へ行こう~開幕2戦目が始まる~

海沿いの四阿(あずまや)で、伊勢湾を眺めながら休憩を取る。
津市の市街地からスタートし、既に25㎞ほど走った。
たったの25㎞だ。
その程度の距離で、休憩は3回目となる。
「ホテルのチェックイン時刻まで時間に余裕があるし、しばらくのんびりしよかぁ」。

と思ったが、のんびりしている場合ではない。
スマートフォンで時間を確認すると、14時を過ぎている。
「あー!神宮、試合開始してるやんけ!」。
もう勝負は始まってるのだ。
Sportsnaviを起動し、神宮球場で行われているヤクルトvs阪神をチェック。

ヤクルトの先発は田口。
彼は開幕前に巨人からヤクルトにトレードされた投手。
巨人時代の田口には何度も痛い目にあった。
俺は飽くまでひとりの阪神ファンであり、選手ではない。
だが、田口には苦手意識がある。
「相手は難敵や…。なんとか攻略してくれ…」。
そう願いつつ、呼吸を整えた後、画面に目をやる。
「嘘やろ…」。
1回表、阪神が4点を先制。
「攻略、してるやん…」。
しかも、期待の新人佐藤がプロ入り初ホームラン。

跳び跳ねたくなるぐらい嬉しかった。
が、阪神の攻撃を観られなかったことに後悔。
「ロードバイクに乗ってる場合ちゃうやんけ…」。
この日、3月27日は開幕2戦目。
開幕カードは、どんな弱いチームのファンでも夢を見ることができる、とても大切なカードだ。
「Sさんは、何故この大事な時に俺を誘った?」と思う。
まぁ、翌日行く牡蠣小屋の予約状況を調べて判断したのはわかっているが、「開幕3連戦にサイクリングはやめてくれよ」だ。

ふと思い出した。
去年もそうだ。
Sさんに誘われ、しまなみ海道、とびしま海道を2泊3日のスケジュールで走った。
初日、Sさんと尾道で待ち合わせた日。
阪神は巨人を相手に東京ドームで開幕3連戦スタート。
「しまなみ海道どころの騒ぎちゃうで」と思った記憶がある。
ちなみに、阪神は3連敗。
夢から覚め、残酷な現実に引き戻された。

「そろそろ行きましょうか?」。
Sさんに声を掛けられ、俺の魂は神宮から伊勢湾の片隅にある四阿に戻った。
「はい」。

サドルに股がりクランクを回し始める。
サイコンに目をやり、8㎞…15㎞…20㎞…25㎞…。
徐々にスピードが上がる。
それを見守った後、前を走るSさんの背中に「開幕3連戦に誘うのはやめてや。本気で」と小声で言った。

つづく

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