(643)ロードバイクと共に三重県へ行こう~「すぐ」の範囲~

伊勢の市街地に入る。
交通量は少ないが、それなりにある信号の数に鬱陶しさを覚えた。
相変わらずSさん(40代 男性 三重県在住の同行者)が前を走り、予約したホテルまで俺を誘導してくれている。
「何から何までお世話になって申し訳無いですわぁ」。
それなりに感謝しつつ(口には出さないが)、クランクを回す。

と、右足首に違和感。
ここまで走った距離は50㎞程度。
体に異変を感じるほどの距離ではない。
自分なりに原因を究明しようと試みる。
「SPD-SLシューズでそこそこ歩いたからかな?」。
この日、家を出た時からずっとSPD-SLシューズを履いている。
ペンギン歩きで駅の中をうろついたり階段を登ったり。
「うん、多分そのせいやな」。
「そうか?確かにペンギン歩きは足首に負担かかるやろけど、歩いた距離なんて知れてるで」。
脳内会議に夢中になっていると、Sさんが遠ざかっていった。

交差点の度に、「ちゃんと付いて来てる?」という確認だろう。
Sさんは何度か振り返って俺を見た。
後方でちんたら走る俺を見て、「遅い」。
そう感じたと思う。
だが、ちょっと待ってほしい。
飛行機のように移動が速すぎるものは、逆に遅く見えるものなのだ(とか言って)。

既に小雨は止んだが、空は灰色のまま。
歩行者はあまり見掛けない。
低い建物が並び、等間隔に交差点があるこの町並みを、妙に味気無く感じる。

右へ曲がり左へ曲がり…。
「さすが、地元住民は道がよくわかってるわ」と感心しつつ、Sさんの背中を追う。
と、信号が赤に。
「krmさんが泊まるホテルは、ここを曲がってすぐですから」。
俺は頷き、「やっとかよ…」。
ルートを把握せず、わけもわからず脚を回してきたが、もうゴールまですぐらしい。
ほっとした。
が、「すぐ?」。
この「すぐ」の範囲は曖昧で、人によって違う。
1分が「すぐ」なのか、30分が「すぐ」なのか。
100mが「すぐ」なのか、1㎞が「すぐ」なのか。

心配しつつクランクを回していると、「ここですよ」。
どうやら、俺とSさんの「すぐ」に対する認識は一致していたようだ。
伊勢 シティホテル アネックス。

時間を確認すると、15時40分。
「一度、家に帰ります。17時半に迎えに来ますので、飲みに行きましょう」。
Sさんはそう言い残して去った。
俺はチェックインする前に、ロードバイクを輪行バッグに収納しなければならない。
「あー、走って疲れた時は死ぬほど面倒くさいねんなぁ、この作業!」。
ひとりで文句を言いながら、駐車場の隅に輪行バッグを広げた。

つづく

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