(653)ロードバイクと共に三重県へ行こう~修学旅行の記憶~

「このまま進んで浦村の牡蠣小屋に着いても、予約した時間まで1時間以上待たなあかんのですよね?」。
「そうですねぇ」。
浦村に向かう車の中で、Sさん(40代 男性 三重県在住の同行者)と話す。
どうやって時間を潰しつつ牡蠣小屋に向かうのか…、悩ましい。

「伊勢名物○○餅の本店が少し先にあるんですけど、寄りましょうか?」。
Sさんはそう提案してくれたが、「帰り、鳥羽駅で電車を待つ間に土産物売場で買うので、今は結構です」と答える俺(ちなみに、土産は買わずに帰った)。
なるべくなら、和菓子屋ではなく、もっと熱いところで時間を潰したい。
血湧き肉踊るような。
と、その時、前方の案内標識に「夫婦岩」の文字が。

小学校の修学旅行で、俺は夫婦岩を訪れている。
まぁ、ふたつの岩を見た、ぼんやりとした記憶に残っている程度だが。
「もっと思い出せよ」。
自分に指示を与える。

確か、座り心地の悪い特急に乗り、大阪から鳥羽へ向かった。
鳥羽港に係船された「ぶらじる丸」で、人生初のカツカレー。
俺は貧乏性なのか、先にルーとライスを食い、残しておいた豚カツをゆっくりと味わう。
次に夫婦岩を訪れたが、この場面における記憶が乏しい。
その後の地引き網や、旅館での校長の話(神話を語っていた)、翌日の伊勢神宮参拝は、それなりに憶えているのに。

失った記憶の穴を埋めたい…というほどセンチメンタルな気分になったわけではないが、どうせ時間を潰さなくてはならないのだ。
また、血湧き肉踊ることもないだろうが、俺はハンドルを握るSさんに話し掛けた。
「夫婦岩に寄りませんか?」。
「はい、行きましょうか」。

車に揺られていると、すぐに海岸が現れた。
「今日は、ちょっとおかしいですねぇ」とSさん。
「この先に、夫婦石を観光する時に利用する駐車場があるんです。けど、今日は車が多いですね」。
我々も徐行しながら車の列に並んだが、「混んでますねぇ。少し離れたところに駐車しましょう」。

数分走ると、神社なのかハイキングコースの入口なのかわからないが、山の麓に駐車場があった。
車から降り、地面に足をつける。
「あぁ、SPD-SLシューズで歩くん、嫌やわぁ」。
とても自然にそう感じたが、「夫婦岩に行きましょう」と言ったのは俺なので、文句は言えない。
歩くしかない。

カツカツ…カツカツ…。
ペンギン歩きを続けるのは苦しい。
苦しみから解放されるため、缶ビールでも飲みながら歩きたいが、近くにコンビニは見当たらない。
「まぁ、しゃあないよな」。
溜め息を付きかけた時、前方に海岸。
「着きましたよ」とSさんが言った。

つづく

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