(659)ロードバイクと共に三重県へ行こう~パールロードを進む~

鳥羽の市街地から牡蠣小屋のある浦村に向けて、パールロードを進む。
隣で運転するSさん(40代 男性 三重県在住 このブログが縁で知り合った人)は、ハンドルを握ったまま前を見詰め、俺は「ハロー」の余韻から覚めない。
ちなみに、今でも思い出し笑いする時がある。
「もうちょいマシな名前があるやろ?イッヒッヒッヒ…」。

3月28日。
この日、元々はロードバイクに乗って牡蠣小屋まで走る予定だった。
ただ、出発数日前から天気予報では雨。
「予報なんか、2日か3日したら変わるやろう」と楽観的に捉えていたが、何も変わらなかった。
当日の朝を迎え、空を見る限り、どうも雨が降る気配しかしない。
「ロードで走るのはやめましょう。車を出しますから」。
Sさんからそう言われ、救われた。

車での移動は楽でいい。
でも、少し悲しい。
俺は家からロードを担ぎ、わざわざ電車に乗って三重県まで来たのだ。
走るために。
そう考えると、ロードに乗れないのは残念な気がする。
しかし、乗れなくてよかった気もした。

去年のことを思い返す。
サドルに股がり、伊勢からスタート。
鳥羽を経由して牡蠣小屋。
車で移動するこの日と同じ、パールロードを走った。
パールロードの特徴は、起伏が激しいこと。
ロードで遠出した際、平坦な道を走った後に山がそびえ立ち、「ここから気合いを入れなあかんな」と必死になって登り、登り切ってから楽をする。
そんな経験は何度もあるが、パールロードは起伏が激しいため、少し登っては下り、少し登っては下り…を繰り返す。
あらかじめコースを把握し、力の入れどころと手の抜きどころがわかっていないと辛い。

あの日はSさんに引かれ、どこかの展望台に寄った。
地元民であるSさんなりの配慮だろう。
「いっぱい走りましょう。景色がいいところ、いっぱい案内しますよ」といった。
しかし、疲れた体で登り続け、「勘弁してくれよ」だ。
展望台に着いてからも、「この先にもうひとつ展望台があるんですけど」と言われ、「パスで」と俺は答えた。

車はパールロードを進む。
窓から外の景色を眺めていたが、ふと前を向くと、「きっついよなぁ」。
目で見てわかる、小さな起伏の連続。
「去年、こんな道をロードで走ったなんて、俺はよっぽど辛い思いをしたんやろなぁ」と思う。
まぁ、実際に辛い思いをした。
そして今も、登っては下り、登っては下り…。
「あ、忘れてた…」。
俺は車酔いする体質だ。
不安に駆られる。

「そう言えば…」。
確か、手首と足首の辺りに、車酔いに効くツボがある(何かで知った)。
右手親指で左手首を押す。
「多分、この辺やろ?」。
次に左手親指で左手首を。
「多分、この辺やろ?」。
押す箇所が適当すぎるからか、効果は感じられない。
無性にアホらしくなり、またアップダウンが続く景色をぼんやりと眺める。

と、左手に湾が見え、白い橋が架かっている。
「あの橋、前にロードで走った時も見たなぁ。確か、渡ったはずやわ」。
そんなことを思い出していると、「あの、ちょっと」。
Sさんが道路の脇に車を止めた。
「え!?まさか…、運転してるSさんが車に酔って休憩したいってオチ!?」。
背筋に戦慄が走った。

つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする