(662)ロードバイクと共に三重県へ行こう~屋根の下の人たち~

「お先に店へ向かいますね」。
Sさん(40代 男性 三重県在住の同行者)にそう伝え、俺は車を降り砂利道を歩く。
ガリッ…ガリッ…ガリッ…。
地面を踏み締めるたびに、SPD-SLシューズの底から鳴る音が不快に感じられた。

牡蠣小屋まで、徒歩2~3分。
時間には余裕があるので、足を止めて入り江に目を向けた。
近くには見知らぬ親子がおり、子供が水をばしゃばしゃして楽しそう。
父親は子供の姿を後ろで見守っている。
そして俺は、背後から父親を見詰めている。
特に意味は無い。

牡蠣小屋に向かって少し歩き、また足を止める。
今にも雨が降りそうな天気のせいか、退廃的な風景だ。
また、妙にせつなく感じ、何となく「ここで一句…」という気分になったが、ポツ…ポツポツ…。
自分に酔っている場合ではない。
雨が降ってきた。

小走りで牡蠣小屋へ向かう。
マルナカ水産マルマ本店。
おそらく、営業時間中ならいつでも入店できるわけではなく、○○時~○○時といった枠でお客さんを入れ換えているのだろう。
店の前まで来たか、入店はできない。
店先で雨宿りして、予約時刻まで待つしかない。

屋根の下から外に手を出してみる。
「雨、ちょっと強くなってきたな」。
「天気予報の通りやわ」。
ひとり頷いていると、どこからか女性5~6人のグループが来た。
同じ屋根の下、キャッキャキャッキャと騒いでいる。
あまりじろじろ見るとやらしいので、それぞれの顔をチラッと見たところ、20代前後から40前の女性たち。
「このグループは、どういう繋がりがあるんやろう?」。
興味が湧く。

「俺のプロファイリングによると…」。
脳内でデータを抽出していると、また新たな客が店先に現れた。
がっちりした体格で、色黒のおっちゃんだ。
俺の興味はおっちゃんに向く。

店先で入店を待つ女性グループと俺。
そして、おっちゃん。
「この人、多分、タダ者じゃないわ」。
おっちゃんには、クルーザーを所有してそうな雰囲気が漂っている(と勝手に感じている)。

ボタボタ…ボタボタ…。
雨が更に強まると同時に、小走りで屋根の下に駆け込む数人の男女。
彼らはおっちゃんを囲んでワイワイと騒ぎ始める。
「この人ら、どういう繋がりがあるんやろ?」。
観察しつつ、予測を立てる。
「あぁ、多分、このおっちゃん、社長さんなんやわ」。
「自分の家族と社員の家族を呼んで、牡蠣食べ放題か。甲斐性あるなぁ」。

他人の人間関係を想像しながら時間を潰していると、「こんにちはー!」。
店の中から男性店員が顔を出した。
「こんにちはー」。
「こんにちは」。
我々、客も挨拶を返す。

時計に目をやると、間も無く、予約の時間、牡蠣食べ放題の時間だ。
「死ぬ気で食おう」。
俺は魂を奮い立たせた。

つづく

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