(664)ロードバイクと共に三重県へ行こう~牡蠣を食いつつも神宮球場が気になる~

軍手をはめた左手で牡蠣を持ち、右手に持ったナイフで殻を剥き、そして食う。
ただそれを繰り返して、数十分経過したわけだが、たまに「は?」と思う。
殻の合わせ目がわからず、どこにナイフを差し込めばいいかわからない。

「おいおい、どこから剥けばええねん?」。
去年、Sさん(40代 男性 三重県在住の同行者)と別の牡蠣小屋を訪れた際も、同じことで手こずった。
「あの時は…、そうや」。
Sさんに聞き、助けてもらった。
今回も頼ろう。
「これ、どこにナイフを差し込んだらいいんですかね?」。
「ここ。ここに小さな溝があるでしょ?ここですよ」。
本当に頼りになる男だ。

醤油、ポン酢、とろけるチーズ、バター。
Sさんに用意してもらった調味料を使い、味を変えつつ食べ続ける。
牡蠣が好物の俺としては、「贅沢な時間を過ごしてるわぁ」。
心の底から実感したが、やはり気になるのは神宮球場でのヤクルトvs阪神3回戦。
既に試合は始まっている。

スマートフォンで「DAZN」を起動し、中継を視聴したい。
牡蠣を食いつつ、阪神を見守りたい。
しかし、ふたりで食事している最中に、動画を視聴するのはSさんに失礼だ。
マナー違反である。
「それはわかってるよ…。わかってるんやけど…」。
葛藤の中で、俺は殻を剥き、牡蠣を箸で摘まんだ。

気になる。
気になる。
気になって、気になって仕方が無い。
スマートフォンで「Sportsnavi」を起動。
テキストで途中経過を確認。
「お、今んとこ、勝ってるやんけ!」。
1回表、阪神はサンズのタイムリーで先制。
3回表には、マルテのホームラン。
牡蠣にバターを塗りながら、「マルテよ。お前はヤルと思ってたよ」。
そう呟きそうになった。

マルテは「いかにもやってくれそう!」な見た目の割に、生命エネルギーが乏しいのか、怪我が多い助っ人外国人選手。
過去2シーズン、「おいおい、開幕前に怪我かよ…」と「おいおい、今度は開幕していきなり怪我かよ…」があり、助っ人として機能しなかった。
ただ、怪我さえなければそこそこの数字を残す(はず)。「今年こそは頼むよ。マルテ」。
俺は彼に語り掛けた(心の中で)。

とりあえず、今のところ阪神がリードしている。
ただ、安心はできない。
先発ガンケルが、いつヤクルト打線に捕まるかわからない。
心配だ。
DAZNを起動し、中継を通して阪神を見守りたい。
だが、マナー違反になる。

トレーに手を伸ばし、牡蠣を掴む。
ナイフを合わせ目に差し込みながら、「DAZNを起動しようか」。
悩む。
「やっぱり、食事中に動画を視聴したら、目の前にいるSさんに失礼やな」。
俺は諦めかけた…が、「ちょっと待てよ」。
Sさんの存在を無視して動画に没頭するのはダメだが、Sportsnaviのテキスト速報に目を通しながら食事するのはセーフではないか?
Sportsnaviを起動したまま、俺はテーブルの隅にスマホを置いた。

とろけるチーズを牡蠣にまぶし、100円ライターを装着したバーナーで軽く炙る。
見ているだけで幸せな気分になるが、1球ごとに更新されるSportsnaviからも目が離せない。
後になって思い返すと、Sさんの前で動画は失礼だがテキスト速報はセーフ…の判断基準がよくわからない。
我ながら。

とまぁ、ヤクルトvs阪神の展開に一喜一憂しつつ牡蠣を食べていると、食べ放題の時間が終了。
精算を終えて店を出る…と、「あぁ…、本降りやなぁ…」。
俺は傘を持っていない。
荷物になるので、旅先には持って来なかった。
「しゃーないなぁ」。
俺は小走りで第二駐車場に向かう。

つづく

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