(665)ロードバイクと共に三重県へ行こう~鳥羽駅までの帰り道~

牡蠣小屋を出ると、雨。
小走りで第二駐車場へ向かい、Sさん(40代 男性 三重県在住の同行者)の車に乗り込む。

3月28日(日)。
この後の予定は、電車に乗って西宮の自宅へ帰るのみ。
「krmさん、鳥羽駅から電車に乗るんですよね?行きとは違う道で鳥羽に向かいますね」。
運転席のSさんは、そう言ってアクセルを踏んだ。

シートベルトを締めながら、思い返す。
行きは、鳥羽の駅前から牡蠣小屋までパールロードを進んだ。
「同じ道で鳥羽駅に出たらええやん」と思うが、この界隈の地理はSさんの方が圧倒的に詳しい。
また、予約した特急の時間まで余裕があるので、少々遠回りしても問題は無い。
「お任せします。まぁ、適当に走って下さいよ」と思いつつ、俺は窓の外に目を向けた。

やがて車は山道に入る。
人も民家も視界から消え、両サイドに木が立ち並ぶだけの景色。
ふと前を向いて、道を見詰める。
俺は「趣味は何ですか?」と聞かれたら、「ロードバイクに乗ることです」と答える人間。
無意識のうちに道を観察する癖がある。
電車に乗って景色を眺めていても、「この道、走りやすそうやなぁ」とか、自然にね。

で、この時は「かなり悲惨な道やなぁ」と感じた。
落ち葉、苔。
更に亀裂。
雨のせいもあり、コンディションは最悪。
「こんな道、ロードで走りたくないよなぁ」。
しみじみそう思っていると、「この前、この道をロードで走りましてねぇ」。
Sさんが口を開いた。
何か苦労話をされた気もするが、今はもう忘れた。

車1台通れる程度の幅しかない山道。
Sさんがドライビングテクニックを発揮し、車は軽快に進む。
「対向車が走って来たらどうするんやろ?」と、少し不安になったが、他に車など走っていない。
人もいない。

それにしても謎だ。
「こんな道、誰が利用するねん?」。
「何のために通ってるねん?」。
自分なりに想像力を働かせたところ、「周辺に林業の盛んな地域があるんやろう」という結論に至った。
まぁ、どうでもいいが。

それはさておき、もうひとつ違和感を感じたことがある。
おそらく誰も住んでいないであろう山の中で、小さい田畑を何度か目にした。
「ここで農業を営むのは、どう考えても不便やろ」と思う。
「これは何やねん?」。
自分なりに考える。
と、「もしかして…」。
自分なりの仮説を立てた。
「もしや、隠田?」。
昔、年貢の対象にならないよう、農民は山間部の人目に付かない場所でも農業を営んだ。
「うん、その名残やな」。
自分なりに結論を導き出す。
正解はわからないが。

雨は止まない。
木々に囲まれた濡れた道を、車はひたすら進んでいる…わけだが、景色が変わらないせいだろう。
「ほんまに鳥羽駅へ向かってんのか?」。
不安になってきた。
「山奥へ進んでるだけちゃうんか?」。
そんな疑問を抱く。
「大丈夫か?」。
ハンドルを握るSさんを横目で見る。
「まさか、俺、埋められるんちゃうんか…?」。

つづく

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