(667)ロードバイクと共に三重県へ行こう-最終回~書籍化の夢~

雨が降り続ける鳥羽駅。
マスクの下から鼻水が流れているのを自覚し、ティッシュで拭いた後、薬を飲む。
「鼻炎、ほんま辛いわぁ」。
俺はベンチに座って、めげながら特急を待った。

スマートフォンに目をやる。
Sportsnaviを起動。
神宮球場でのヤクルトvs阪神戦は、7点差でリードしている阪神が勝つだろう。
それはそれで嬉しいが、家から遠く離れた鳥羽で、ひとり野球観戦していることに虚しさを覚えなくもない。

と、特急が入線。
輪行バックを担ぎ、よたよた歩いて乗り込む。
ここからは気を引き締めなければならない。
俺なりの勝負どころだ。
あらかじめ、輪行バッグが置きやすいよう、車両最後列の座席を予約しているが、置ける保証は無い。
以前、しまなみ海道に走るため新幹線に乗った時も、今回の旅で難波から特急に乗った際も、最後列の後ろにあるスペースにはキャリーバッグが置かれていた。

「頼む。今回はスムーズに置かせて…」。
車内ドアが開いた。
祈りながら目を開けると、車内はガラガラ。
隣に座る人もおらず、俺は座席の後ろにある空きスペースを独占。
「耐えた…」。
とりあえず、難波まで安心できそうだ。

席に着いてぐったりしていると、特急は走り始めた。
緑豊かな鳥羽の市街地から、緑しか無い郊外へ。
しばらくすると、伊勢の市街地。
Sさん(40代 男性 今回の旅を企画してくれた人)と走り、飲み屋へ歩いた伊勢の街。
車窓から眺めていると、自然と身近に感じられた。

特急ひのとり、津城、伊勢、夫婦岩、廃駅、ハロー、牡蠣小屋…。
普段、マイペースに走り、マイペースに生きる俺にとって、旅はいろいろと詰め込み過ぎて疲れる。
「しんど…」。
瞼(まぶた)を閉じる俺。

夢の中で、俺は東京行きの新幹線に乗っていた。
「krmさんのブログを書籍化したいです」と言う出版社と打ち合わせをするために。
まぁ、飽くまでも夢なので、細かいことは抜き。
いきなり前提条件がある状態で夢は始まり、次の瞬間、俺は会議室にいた。

どうやら、出版社に着いたらしい。
飽くまでも夢なので、展開が早い。
で、目の前には、どこかで見たおじさん。
おじさんは会釈した後、俺に名刺を差し出した。
「どうも」。
名刺に目をやると「編集 セルジオ越後」。
「え!?この人、サッカー以外の仕事もしてたんや!?」。
腰を抜かしそうになる俺。

「ブログの書籍化の話ですが、もうね、サンプルは出来上がっています」。
越後氏にペラペラの本を渡され、目を通す。
と、「え!?これ、漫画やんけ!」。
「越後さん、自分のブログを漫画化するんですか?」。
「はい、そうです」。
かなり意表を突かれた。
「漫画化…ですか。正直、その発想は無かったです」。
「そうですか」と、笑顔の越後氏。

夢の中で考える。
「漫画原作者…ということは、『北斗の拳』の『武論尊』」。
「それはそれで格好ええな」。
また、夢の中で印税の計算をしていると、「あと、お願いがあるんですよ」と越後氏。
「今のままではページ数が少ないので、3日以内に書いてほしいものがあります」。
「はぁ、何でしょ?」。
「『パリ~ルーベ』を走った記録です」。
「ちょっと待って下さい。そんなん、走ったこと無いですよ。フランスに行ったことすら無いのに」。
「いや、だからね、『走ったテイ』で書いてくれたらいいんですよ」。
俺は、「この人、悪いこと考える人やなぁ」と思いつつも、「わかりました」と言って…次の瞬間、新神戸に向かう新幹線の中にいた。

目が覚める。
俺は近鉄特急の中。
30分ほどしか眠っていなかったが、「随分と内容の濃い夢やったなぁ」と思った。

《CAST》



Sさん


セルシオ越後

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