(678)アワイチではないが、ロードバイクに乗って淡路島を走る~もうひとりの自分~

由良漁港。
防波堤の端で、釣りの用意を始めるNさん(50代 男性)。
「今日の餌はね、とうもろこしなんですよ」。
スナック菓子が入っていそうな小さめの袋を差し出され、「これって、人間が食べても美味いんかな?」。
興味が湧く。
俺はとうもろこしが好きなので。

「10分~20分もあれば、最低でも5匹は釣れますよね?」。
特に根拠も無く、面白がってNさんにそう言うと、「無理ですよ」と。
「鳴門やと真鯛を狙いますが、ここはチヌ狙いです。チヌを釣るまでに、小さい魚は何匹か釣れると思いますが、それは除外なんでね。本命のチヌがすぐに釣れる…ということは無いと思います」。

Nさんの斜め後ろに立ち、ウキを凝視する。
が、微動だにしない。
撒き餌を投げながら、「今ね、潮の流れがこうでね、ああでね…」と蘊蓄を垂れる彼を見ていると、「あんまり期待でけへんなぁ」と思った。

「あそこ、見て下さい!」。
そう言われ、水面に目を向ける。
「白い魚?まぁまぁ大きいやんけ!」。
一瞬、熱気が高まった。
しかし、「あぁ…、ビニール袋みたいですね…」とNさん。

漁港の景色を眺め、20分経過。
何も釣れない。
気のせいか、斜め前から「おもろなってきたなぁ」と声が聞こえた。
俺としては、「何がどう面白いねん?」だ。

30分経過。
小さなフグを1匹釣ったが、即リリース。
「パッとせえへんなぁ」。
段々と退屈な気分になり、「Nさん。俺、トイレ行ってきますわぁ」。

漁港を出て、車道の脇にある、お情けのような狭い歩道をとぼとぼ歩く。
由良大橋の向こうにある公衆トイレまで、少し距離がありそうだ。
「はぁ…。SPD-SLシューズで歩くの…ほんま嫌い…」。

歩きながら、周辺の小さな町並みを観察していると、「Coca Cola」の看板…よりも、壁の染みの方が目立っている建物。
「好意的な解釈をした場合、こういうのをノストラジックって言うんかなぁ」。
足を止める俺。

気になる。
色褪せた「Coca Cola」の右に書かれた「スナック みたや 海岸荘」。
スナックの「みたや」と民宿の「海岸荘」の宣伝をしているのだろう。
いや、スナックの名前が「みたや 海岸荘」の可能性もある。
「どっちや?」。
考える。
また、年季の入った看板を見詰めていると、「そもそも、今も営業してんのか?」という疑問も湧いた。

「そんなもん、どうでもええんちゃうか?」。
もうひとりの自分が、脳内でささやいた。
「そやな。ほんま、どうでもええわ」。
俺には、他に考えなければならないことがある。
それは、今日のルート。
「お前はアホか?そんなもん、家を出る前に決めとけよ」。
もうひとりの自分が、また脳内でささやいた。

つづく

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