(681)アワイチではないが、ロードバイクに乗って淡路島を走る~赤い腕、赤い顔~

76号線。
海沿いの道が続く。
「天気はええし海も綺麗やし、気持ちええわぁ」。
由良漁港をスタートした時はそう感じた。
しかし、しばらく走っていると、景色に変化が無いからだろう。
「ほんま、退屈な道やなぁ」。

と、向こうの方から黒いジャージに身を包んだロード乗り。
「こんな時間に走るって、暇な人もおるんやなぁ」。
自分を差し置いてそんなことを思ったが、違う違う。
淡路島がロード乗りのメッカであることを忘れていた。
すれ違う前に軽く右手を挙げる。
そして、相手も軽く右手を挙げ返す。
まぁ、ちょっとした挨拶だ。
ただ、後になって考えてみると、俺はグローブを家に忘れたため、素手。
端から見れば、少し間抜けなロード乗り…だったかも知れない。

代わり映えの無い景色は一旦終わり、洲本の温泉街に入る。
交通量は少ないが、道は狭く走りにくい。
道を囲むのは、ホテル、温泉旅館、そこに勤務する人たちの社宅。
「あ、そう言えば、3時間ほど前か。Nさん(50代 男性 趣味は釣り)の車で由良漁港に向かってる時、この道を通ったわ」。
そうだ。
車内では、Nさんがニヤニヤしながら「色っぽい仲居さんがその辺を歩いてませんかね?宿泊すると、夜に誘ってくるような」と話し掛けてきたので、「そんな都合のええ話は無いでしょ」。
まぁ、常識で考えればわかる。
ただ、念のため、色っぽい仲居さんを見掛けないかとキョロキョロしつつ、俺はクランクを回した。

温泉街を抜けると、また海沿いの道が続く。
脚は常に回しているが、頭は退屈。
「何か刺激が欲しいよな」などと考えていると、向こうの方からロード乗りがふたり。
「カップルでアワイチかぁ。羨ましいもんですなぁ」。
卑屈な気持ちになりつつも、挨拶はしておこうと、軽く会釈した。
が、無視された。 
ブラケットを強く握り、「挫けずに進もうや」と自分に言い聞かせる。
ただ、よく考えてみると、Nさんとの待ち合わせ時間まで余裕がありすぎる。
「俺は何を真面目に走ってるんや?」。
「挫けて、休憩を取ろう」。

景色を眺めながら、道の脇でボトルの水を飲む。
青い空。
青い海。
そして、赤い腕。
「おおー。そんなに走ってへんのに、結構、日焼けしたなぁ」。
スマートフォンで自分の顔を取り、画像を確認。
「顔も赤いわ。酔っ払いみたいになってるやんけ」。
ちょっと笑いそうになったが、「日焼けしてた方が男らしくてええやん」と自分に声を掛け、またサドルに股がった。

ちなみに、帰ってから風呂に入る際、腕も顔もヒリヒリ。
湯船に浸かるのも、体を洗うのも苦労した。

つづく

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