(683)アワイチではないが、ロードバイクに乗って淡路島を走る~一人百物語の時間~

信号待ちの間、サイコンのボタンをポチポチと押し、表示を切り替える。
「平均速度」は見ないよう注意して(傷付くため)、「走行距離」を確認。
Nさんとの待ち合わせ場所、岩屋の淡路シェフガーデンまでの距離は順調に縮まっているようだ。
が、「時刻」を確認すると、待ち合わせ時間にはまだまだ余裕がありすぎる。
「さっき、大浜公園で十分休憩したつもりやってんけどなぁ」。
「はぁ、参った…」。
信号が青に変わり、「次はどこで時間を潰そかぁ」。
悩みながら、俺はクランクを回し始めた。

洲浜橋を渡ると、右手に海、左手に山。
由良をスタートしてから見続けた景色…と似たような景色が、また始まる。
同時に、特に刺激を受けることも無く、脚は回し続けているが頭は暇…の時間も始まる。

頭は暇…を解消するため、何か考え事でもしようと思ったが、考えたいことが思い付かない。
「仕方が無いな。『一人百物語』でもしよか」。
一人百物語とは、脳内怪談会。
脳内で百話の怪談を語る。
そして、百話語り終えた時、怪異が起こる…かどうかは分からない。
語り終えたことが無いので。
では、早速、いってみよう。

———-第1話 開始———-
「前に勤めてた会社の人事に、Aさんって人、おったやろ?」。
「あぁ。あの、肥えた人な」。
「Aさんってな、若い時にかなりヤンチャやったみたいで、学校もロクに行かんと、夜中にバイク乗り回してたんやって」。
「ほぅ」。
「で、ある夜、仲間と『心霊スポット巡り、しようや』って話になってな」。
「不良がバイク乗って心霊スポット…。よくあるパターンやな」。
「まあな。そんで、I旅館に行ったと」。
「I旅館って、Mにあるあの旅館か?有名どころやんけ」。
「そう、そこや。ボロボロの廃旅館。で、Aさんとその仲間は、懐中電灯持って侵入したと」。
「ほぅ」。
「玄関入って、廊下。廊下の脇には、客室のドア。で、とりあえず近くのドアを開いてみた…と」。
「そんでそんで?」。
「奥に客間、手前に個室。まぁ、トイレと風呂やな。懐中電灯で照らすと、どこも傷んでて、散らかってたらしい」。
「廃旅館やからな」。
「Aさんたちは、1階の客室を片っ端から見て回ったんやけど、段々と飽きてきた」。
「何で?」。
「客室の造りがどれも一緒やからや。で、そんな時、ある客室のドアを開いた」。
「ほぅ」。
「奥に客間、手前にトイレと風呂。他の客室と同じ。でも、この客室だけ雰囲気が明らかに違う」。
「例えば?」。
「トイレや。『中に何かが潜んでる』ってビンビン感じる。それも、Aさんだけじゃなくて、仲間も感じてたらしい」。
「ほぅ」。
「ドアノブを握りながらも、『このトイレの中、見たらあかん』、『開けたら、ほんまにヤバい』。本能がそう訴えかけてくる…」。
「そんでそんで?」。
「ビビりまくってたけど、思い切ってトイレのドアを開けた…ら」。
「開けた…ら?」。
「何かが宙に浮いてて、『やっぱり霊がおったんや!?』って腰抜かしそうになったと」。
「ほぅ」。
「でな、Aさんも仲間もな、呆然と霊を見詰めてたらな、気付いたんや。『これ、霊じゃないわ』って。」
「ほぅ」。
「霊じゃなくて、ほんまに人が首吊っててんて」。
「嫌な話やなぁ」。
「後から警察呼んだりして、大変な目にあったらしいわ」。
———-第1話 終了———-

一人百物語。
語っているのは俺。
聞いているのも俺。
最初からオチが分かっている俺からすると、「何もおもろないやんけ!」だ。
もう無心になってクランクを回すことにした。

つづく

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