(684)アワイチではないが、ロードバイクに乗って淡路島を走る~小銭に泣き小銭で笑う~

軽くクランクを回しながら腕に目をやると、「めっちゃ赤いなぁ」。
手の甲も赤い。
グローブを家に忘れたため、素手でハンドルを握る俺は、ロード乗りにとって日焼けしない部分も赤くなった。
今、この記事を書きながら手の甲を確認すると、皮が浮き上がり、中心にはポツポツと穴が空いている。
まるでフジツボのようだ。

6月17日。
この日、汗まみれになるほどの暑さ…ではなかったが、日差しは強かった。
日に焼け、喉が渇く。
既にボトルは空だ。
「次のコンビニか自販機まで、ちょっと走らなあかんなぁ」。

淡路島には、小さな町が点在している。
町と町の間は、山であったり小高い丘であったり、山と海に挟まれた平坦な道であったり。
小さな町→自然→小さな町→自然…のパターンが続く。
この時、俺は自然ゾーンにいたため、コンビニで水を買うには次の町まで進まなければならない。
出来ることなら、自然ゾーンでも自販機が1台あれば助かる。
冷たい水を飲みたい。
ただ、よく考えてみると、自販機があっても水は買えない。
金が無い。
いや、厳密に言うと、金はある。
サイクリング用の財布には、5,000円札が1枚。
小銭は、1円玉だけは大量にあるが、10円玉は10枚に満たないだろう。
自販機があったとしても、利用できない。
1円玉は対応していない。
子供の頃、父親に「1円を笑う者は1円に泣く」と教えられた記憶がある。
俺には小銭を笑う習慣など無いが、笑ってないのに泣かされる理不尽さを味わっている。

水が飲めない不安。
「どうしよ…」。
「ヤバいな…」。
気持ちが焦る。
過ぎ去ったクソ暑い夏の日、野球の練習中に水を飲ませてもらえなかった記憶。
それが、トラウマとして残っているのか。
当時の指導者をボコボコにしてやりたい。

15分ほど我慢して走ると、小さな町が見えた。
「お、自販機あるやんけ!」と、サドルの上で小躍りしたが、「あかんわ…」。
俺は自販機で使える金を持っていないのだ。
スルー。

少し進むと、また自販機が視界に入った。
「悲しいけど、スルーやな…」と思ったが、「ちょっと待てよ」。
脚を止める。
「100円玉、1枚あるかも知れんわ」。

普段、サイクリングに出る前のルーティンが俺にはある(誰にでもあるだろうが)。
そのひとつが、ジャージを着ると3つのバックポケットの左側にお守り、右側にスマートフォンを入れる。
真ん中には、万が一ボトルが空になった時、水を買うための100円玉(1枚)。
背中に手を伸ばし、真ん中のポケットをまさぐると、「耐えた…!」。

習慣とは凄いものだ(ひとり頷きながら)。
前日、日常生活で使っている革財布の中身(現金)を、サイクリング用の財布に移し替えていた。
遠出する時は、いつもそうしている。
が、それとは別に、この日は朝4時に起き、寝ぼけた状態でジャージを羽織り、そしてルーティン通り100円玉1枚を真ん中のポケットに入れていたようだ。
「いやぁ。隠れたファインプレー、炸裂したね。俺」。

とまぁ、水が買えるということで、自販機に100円玉を投入。
水のボタンを「おっらぁ!」と押した…が、無反応。
よく見ると、水は110円だった。
普段100円の水を買う俺にとって違和感を覚えたが、仕方が無い。
更に10円玉を投入。
購入。
ペットボトルの蓋を開け、喉に流し込む。
「生き返るわ」。
「うん、110円以上の価値があるね」。
余った水をボトルに流し込み、サドルに股がる。
岩屋に向けて、俺はまた走り始めた。

つづく

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