(700)ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅~世界のSHIMONO~

大和川を渡り、堺市に入る。
堺は大阪府でも存在感がある町だ。
中世に貿易都市として栄え、摂津、河内、和泉(今の大阪府)でNo.1の時代もあったかと思う。
また、刀鍛冶や鉄砲鍛冶、武器や刃物の生産地として職人も多かっただろう。
俺は料理人ではないが、今も堺の包丁はブランド力がある(そうだ)。
「世界のSHIMANO」の本社があるのも、職人が集う町の流れと関係があるかも知れない。

そんなことを考えながらクランクを回す。
堺は高級住宅街もある。
そして開けた町でもあり、大阪市から和歌山方面へ向かう要所だからか、交通量が多い。
ただ、信号と信号の間隔が大阪市内ほど短くないし、道も広いため、ストレスを感じない。
「自転車乗りに対する配慮。これも『世界のSHIMANO』のお膝元やからかなぁ」。
ひとりで納得していると、ふと思い出した。
小学生時代、下野(しもの 男)という同級生がいたことを。

下野。
今はもう付き合いが無い。
いや、そもそも中学の時点で既に付き合いは無かった(同じ中学なのに)。
猿っぽいと言うかルパン三世のような顔立ちで、でも子供っぽくない大人びた顔立ちでもあり、ゴルゴ13のようでもあった下野。
「『(ルパン3+ゴルゴ13)÷2』って、どんな小学生やねん?」と思うが、俺の記憶ではそうなのだ。
小学生の俺は、いつも彼と一緒にはしゃぎ、一緒に遊んでいたわけでもなかったが、何度か家を訪れている。
確か、ネジか釘かスプリングを作っている町工場で(曖昧な記憶です)、1階では機械が稼動し、2階は住居。
1階と2階を結ぶ階段の脇に棚があり、箱に入れた大量のネジだか釘が並べられていた(と思う)。
今、その会社がどうなったのか、今、下野が何をしているかは知らないが、もしも革新的なネジを作っていたら、「世界のSHIMONO」になっているかも知れない。
どうでもいいが。

以前勤めていた会社に、山本さんという先輩がいた。
社内では「マイペースすぎる」とか、「社長の顔色を伺ってる人」と陰口を叩かれていたが、俺にとって悪い先輩ではなかった。
短い間ではあるが、彼に仕事を教えてもらう機会があり、上からものを言うのではなく、「すごく気を使ってくれてるなぁ」と感じられる接し方で向き合ってくれた。
感謝している。
ただ、「ピザの食べ方の流儀」とか「本当に美味いカレーとは」など、変なところにこだわりを持っている人で、「この人、変わった人やなぁ」という印象も残っている。
あと、天然。
「昔なら映画俳優になってたで」と思わせる顔立ちだが、天然。
ギャップが凄い。
ある日、出張から戻ったばかりの山本先輩と事務所で顔を合わせた時のこと。
「おう、krm。カレー食いに行こか?」。
「はい」。
ふたりで心斎橋のカレー屋で飲み食い…した後、「おう、krm。すまんな。財布、忘れたわ」。
目上の人から飯に誘われ、俺が全額払ったのはこの時が初めて。
まぁ、山本先輩が変わった人であって、天然であって、決して嘘を吐いたり変な計算をする人ではない。
俺の中で「まぁ、ええわ」で処理。
と、そんなことを同期と話したところ、「あぁ、山ちゃんなぁ」。
同期は、俺との間では先輩に対しニックネームを付けて呼んでいる。
「山ちゃんなぁ、あの人、ええ人やで。わけわからんこと言うけど、俺、先輩の中で山ちゃんが一番やと思うわ。山ちゃん、嘘が無いもん」。
その後、山ちゃん先輩は転勤し、俺は会社を辞めた。
今はどこで何をしているか知らないが、もしも山ちゃんが何かの分野でノーベル賞級の功績を残していれば、「世界の山ちゃ…

ひとり旅。
ひとりライド。
脚は回し続けているが、頭は退屈だ。
どうも、どうでもいいことばかり考えてしまう。

つづく

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