(705)ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅~墓参り~

グローブを外しながら「やっと着いたわぁ」。
墓場の近くにある駐車場。
柵にロードバイクを立て掛け、OTTO LOCK。
ボトルとサイコンをバックパックに放り込み、墓場へ続く通路に目を向ける。

墓参りの間、10分ほどロードから離れる。
その程度の時間でも、盗難の可能性が0では無いため、不安を覚える。
もし、「墓参りに行ってロードが盗まれた」となれば、俺は一生神仏を信じないだろう。

フェンスに囲まれた通路を進むと、左手に立ち並ぶ無縁仏の墓石。
軽く頭を下げて通り過ぎ、バケツ置き場へ。
水道の蛇口を捻り、まずは顔を洗って「生き返るわぁ」。
無造作に干されている雑巾をひとつ手に取り、バケツに水を入れ、「よっこらしょ」。

「あぁ、重たいなぁ」と愚痴りながら、よたよた歩き、うちの墓石の前でしゃがんだ。
とりあえず、墓石を洗わなければならないが、動く気にならない。
ござでも敷いて、横になりたい。
しかし、ここでのんびりしている場合ではない。
雨が本降りになる前に、墓参りを済ませて孝子峠を越えたい。

仕方無しに立ち上がり、雑巾で墓石を拭く。
この作業をしていて毎回毎回思うのが、「ほんまに綺麗になってるか?」だ。
洗剤でも使えばピカピカになり、劇的に変わるだろうが、水を絞った雑巾で拭いても効果は感じられない。
まぁ、効果よりも「墓石を拭く」という作業に意味がある…と自分に言い聞かせるしかない。

次は花立を洗う…わけだが、ここで注意が必要だ。
以前、この日のように暑い時期のことだ。
枯れて腐った花を花立から抜いた際、小さなゴキブリがうじゃうじゃ出てきた。
それは、俺にとってなかなかショッキングな光景で、二度と目にしたくない。

痛んだ花のふにゃふにゃになった茎を、指先でゆっくとりとつまみ上げ、「ゴキブリ、おらんぽいな。セーフ」。
胸を撫で下ろす。
と、蜂だか虻が俺の周りを飛び回っていた。
「どっか行け」。
攻撃的な虫は嫌いだ。

花立を洗った後、バックパックから線香を取り出し、ターボーライターで着火。
しゃがんで墓に線香を供え、「この後、孝子峠を登るので、雨が本降りにならないようお願いします」。
手を合わせていると、「プーン」。
耳元で蚊が飛ぶ音。
「どっか行け」。

立ち上がり、帰る用意をしていると、足元に蚊が3匹ほど飛んでいた。
「どっか行け」。
バックパックを背負い、駐車場に戻ってロードのサドルに跨がる。

進路は南へ!(長渕風に)。
ゴールである和歌山市駅付近には、残り15㎞ほどか。
岬町を走り抜け、孝子峠を越えれば和歌山だ。
「さぁ、行こか」と走り出したが、足首に違和感。
「あいつら、ソックスの上から刺したんか?」。
信号待ちのたびに足首を掻きながら、俺は進んだ。

つづく

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