(707)ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅~大人のレベル上げ~

孝子駅で休憩する。
目的地である和歌山市内のホテルまで、残りあと8㎞。
ここまで70㎞以上走ったのだ。
8㎞など、大した距離ではない。
ただ、休憩した場所が駅…なのがまずかった。
「無理せんと、電車に乗って輪行しよか」という気分になってしまう。

「和歌山市駅まで200円もせえへんやろ?電車に乗れって」。
「せっかく電車通ってるんやから、乗ったらええやんけ」。
「楽しよう。楽を」。
「どうせな、ホテルにチェックインする時、ロードバイクを輪行バッグに収納するんやから、今やって電車に乗ったらええやんけ」。
脳内で誰かが囁く。
「確かに…」と、一瞬、雑音に耳を貸しそうになったが、「ちょっと待て」。
理性が働いた。

よく考えよう。
ゴールまで僅かな距離なのだ。
ここまで来て輪行は無いだろう。
冷静になる。
「ん?そうか…、邪念が湧くのは、駅で休憩してるからや」。
一刻も早く駅から離れようと、慌ててサドルに跨がる。

危ないところだった。
最後の最後で楽な道に逃げそうになったが、俺は強い意思を持ち、それを回避。
「大人としてのレベル上げ」に成功した気がする。
40を過ぎて、ついに「ギラ」を覚えた感覚。

孝子駅から少し進むと、急に傾斜がきつくなり、登りらしい登り区間に入る。
いつもなら、「勘弁してくれよ…」と思うが、登りが大嫌いな俺でも、ここは大丈夫。
気持ちに余裕がある。
と言うのも、過去に何度か走った峠だ。
確か、「しんどい…」と感じる距離は50mほど。
身構える必要など無い。
が、一応、インナーに入れておく。

「1、2、1、2…」。
「1、2、1、2…」。
サドルには跨がらず、左右に体重移動を繰り返しペダルを踏む。
雨?
汗?
顔が濡れてきた。
脚に疲労を感じ、「だっるー」。
しかし、たかが50mほどの我慢。
もうすぐ下りに入る…はず。

登りが続く。
「おいおい、どういうことやねん?」。
「どこが50mやねん?」。
文句のひとつも言いたくなったが、待て。
そもそも、自分自身のいい加減な記憶に問題がある。
怒りの矛先をペダルに向け、踏む。
踏む。
そして、緩いカーブを曲がる。
と、錯覚だろうか。
「アホか!まだ続くんかよ!?」。
叫びたくなったが、そもそも自分自分のいい加減な…。

左足を地面に付け、ボトルに手を伸ばす。
「しんどっ…。よっとやわ」。
「ここからホテルまで7㎞か…」。
喉に水を流しながら、俺は和歌山の町並みを見下ろした。

つづく

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