(718)ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅~苛立てば無になれ~

南海和歌山市駅の裏側を流れる紀ノ川を渡り、孝子峠へと向かう。
「だるいよなぁ…」。
朝っぱらから酒を飲みたくなってきた。
と言うのも、これから進む道は、狭い割に交通量が多い。

俺はこの道が大嫌いだ。
以前、走った時のこと。
「車道におったら車の邪魔になるかな?」と思い、歩道に逃げた。
ら…、嫌な角度で溝の蓋を踏んでしまい、スリップ。
転倒。
歩道も狭いため、倒れた拍子に隣接する工場の金網に左肩を打ち付けた。
更に災難だったのが、金網に尖っている箇所があり、左肩から流血。
ひとりでプロレスをしている気分になった。
ロクなもんじゃない。

「怪我の無いように、遅くてもええから慎重に進もう」。
「ロードバイクで歩道を走るのは心情として嫌…やけど、車道が混んできたら無理せず歩道に逃げよう」。
そう自分に言い聞かせ、クランクを回しては止め、回しては止め…。
歩道に逃げては車道の様子を伺い、車道に戻って混み出せば、また歩道に逃げ…。
「あかんわ…」。
自制できない。
イライラしてきた。

何に怒りをぶつければいいのか考えたところ、特に思い浮かばず、ただただブラケットを強く握る。
ブラケットには何の怨みも無いが。

「なるべく何も感じない」。
「考えない」。
そう自分に言い聞かせ、無になってクランクを回す。
勿論、信号や真横を通り過ぎる車には注意するが、それさえも無意識のうちに処理するのだ。

そう、無になって…。

無に…。

無…。

無…。

左足を路面に着き、我に返った。
俺を囲むように停車する何台もの車。
信号に目をやると、赤。
ボトルケージに手を伸ばしながら辺りを見回すと、どうもおかしい。
「あら?孝子峠までの道、こんなに広かったっけ?」。
「いつの間に片側2車線になったんや?」。

逆方向からだが、昨日も同じ道を走っている。
それが、昨夜のうちに拡張工事を始め、そして終えたとは考えにくい。
と言うか、ありえない。
「どういうこと?」。
やはり、どう考えても答えはひとつ。
「あぁ…、道、間違えたわ…」。

無意識に…が裏目に出たようだ。
ただ、不幸中の幸い。
おそらく、少し遠回りになるだろうが、このまま進んでも孝子峠にたどり着く。
「うん、大丈夫そうやな」。
Googleマップを確認して、少し気が楽になった。

つづく

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