(723)ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅~Tさんと俺①~

車の流れが止まり、身動きが取れない俺。
左足を路面に着いて、トップチューブに跨がったままうんざりしていると、TさんからLineが入った。
「久しぶり~。××日の日曜日、昼飲みせえへん?」。

Tさんは、小中学校時代の同級生だ。
確か、小学校の3年生か4年生の時に転校してきた。
「おいおい、転校生が入ってくるで。可愛い子やったらええよなぁ」。
そんな期待に胸を膨らませた記憶はある。
「初めまして…。Tです。みんな宜しく…」。
色白で背が高く、幸薄そうなTさん。
黒板の前で挨拶をする彼女の記憶は、ぼんやりと残っているような、いないような…。
ちなみに、顔立ちはORIGINAL LOVEの田島貴男似。

小学校でも中学校でも、何度か同じクラスになっている。
ただ、まともに会話した記憶は無い。
「krmくん、明日、私と日直やねぇ」。
「はい、そうですね」。
その程度のコミュニケーションはあっただろうが、向き合った記憶は無い。
何となくだが、彼女は男子生徒に絡んだり絡まれたりする女の子ではなく、大人しめの女子同士で楽しい時間を過ごしていたのだろう。
あと、教室の隅で校庭を眺めながら、ギター片手に「接吻」を歌ったり。

中学を卒業し、俺もTさんも別の高校に進む。
記憶は曖昧だが(曖昧だらけだが)、彼女はそれなりに偏差値の高い女子高に入り、接点は完璧に無くなった。

が、あれは俺が大学生の頃だ。
誰かとの待ち合わせか何かで心斎橋を歩いていると、「久しぶり~」。
口には出さなかったが、「誰ですか?」と思った。
と言うのも、笑顔で目の前に立つ女性は、どう見ても水商売。
当時(まぁ、今も)、俺の交遊関係に水商売をしている女性はいない。
「誰?」。
「この、色白で背が高い人、誰?」。
「あ、ORIGINAL LOVE」。
「Tや!」。
少し懐かしい気分に浸ったが、もともと大して仲が良かったわけでもないので、何を話していいか分からない。
多分、俺は「あ、どうも」とか言ってその場を去ったと思う。

また15年ほど全く接点の無い日々が続き、久し振りにTさんと再会したのは、お互い30代半ばの頃。
飲食店を経営している同級生が、「みんなで飲みに来てや」と声を掛け、10人ちょっと集まり、小さな同窓会みたいなものが開かれた。
場は盛り上がっていたが、学生のノリで飲む連中との絡みが面倒に感じ、俺はおっとり飲むチームに移動。
そこで、近くにいたのがTさん。
「krmくん、久し振りやね」。

これまでの人生において、まともに会話をしたことが無いTさんと初めて向き合う。
「久し振り。前に会ったんはいつやったっけ?あ、心斎橋で会って以来?」。
「そうやねぇ」。
「俺、水商売してる知り合いおらんし、あの時、Tさんの変わり様にびっくりして、まともに話されへんかったわぁ」。
「あぁ、あの時ね。私、実はね…」。
彼女が自分の人生を語り始めた。

つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする