(148)強風の中、明石焼きを食べる。Tさんとふたり、初めて走る明石ライド-3

明石へのロングライド当日、待ち合わせ場所の公園で、ひとりただすむ俺。
待ち合わせ時間を10分ほど過ぎた。
と、公園に面した道の向こうから、何かわめき声が聞こえる。
Tさんだった。

「困りましたわぁ。大変ですわ。家から出たところで、チェーンが外れて、それから大変ですわぁ」。
会っていきなり言い訳である。
最初、何を言っているのかわからなかったが、Tさんが押してきたマウンテンバイクをよく見ると、確かにチェーンが外れていた。
「これぐらいやったら、すぐ治りますよ」と、俺はサドルバッグから軍手を出し、チェーンをはめようとした。
が、外れたチェーンがクランクの根元とフレームの隙間に挟まって、とれない。
「何でやねん?何でそうなるねん?」。

今、我々の手元には、大した工具が無い。
もう、力業でいくしかない。
アーレンキーを1本、手に取り、無理矢理チェーンを押して、隙間から出す作業に取り掛かった。
結局、走れる状態にはなったが、30分もロスすることになり、先が思いやられた。

国道2号線を西へ。
俺は、時速20㎞ちょっとを意識して、Tさんの前を走った。
その日、台風の前日だったので、少し風が強く感じたが、雨の心配は無さそうだ。
「概ね、快適なサイクリングができそうやな」と思いながら、クランクを回す。

走りながらも、俺は時々振り返り、Tさんに確認を取った。
「足は大丈夫ですか?体力的に問題無いですか?」。
「大丈夫です!」と、Tさんは元気な声で答えてくれた。
何かもう、テンションが上がりまくり、元気が有り余ってる様に見受けられた。

普段よりゆっくりと、芦屋市を通過し、神戸市に入る。
「デブ時代、わざわざこの辺りまで、夜中にひとりでラーメン食いに来てたよなぁ」と、感慨にふけながら足を動かしていると、そこは住吉川。
川幅は狭いが、遊歩道があり、小綺麗な建物と、遠くに山が見える。
「神戸の街に綺麗な印象が残るのは、都会と自然が身近に感じれるからやなぁ」と思いながら、橋を渡ると、後ろを走るTさんが何か大声でわめいている。

「メカトラブルか?またチェーン外れて、面倒なことになったんか?」
「体力的にきついんかな?どこか痛くなった?」
心配になり、振り向いてTさんに確認を取った。
「どうしました?何かありましたか?」。
すると、「いえ、何もありませんよ」と普通に返される。
「今さっき、何か声を張り上げて叫んでませんでした?」
「あぁ、『神戸牛が食べたいな!』と言ったんです」
「どういうことですか?」
「神戸を走っているので、神戸牛が食べたいと思いまして」。

「何やねん?何でやねん?」と、俺は心の中でつぶやいた。
この先も、その時その時の感情を叫びながら走るのか…?
勘弁してくれよ、Tさん。
明石まで、まだ30㎞ある。
まったく、先が思いやられるぜ。

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