(726)ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅~浜寺の駅舎~

北へ北へと進み、高石市、そして堺市に入ると、急に気が緩んだ。
大阪市内まで、あと少しのところまで来たからだろう。
「ちょっと休憩しよかぁ」。
辺りを見回す。
「浜寺か。ちょうどええな」。

浜寺公園の前でサドルを降り、信号を渡る。
と、阪堺電車の「浜寺駅前停留場」。
率直に、「明治辺りに建てられてから、1回も改装してへんのかな?」と感じられる、ボロくさ…ではなく、古びた味のある駅舎だ。
ただ、中には数段の自販機が並び、レトロな雰囲気をぶち壊しているような気もした。
もったいない。

ちなみに、俺は阪堺に乗ったことが無い。
乗らなければならない用事が、これまでの人生において一度も無かったからだ。
しかし、阪堺に対し、以前からちょっとした憧れを抱いている。
「短い路線」に「チンチン電車」。
そして、「浜寺や帝塚山といった金持ちの町を走りつつも、デンジャラスゾーン(昔、西成の暴動で放火された停留場がある)も走る」という点。
いやぁ、バラエティー豊かで興味深い。

「とりあえず、記念に1枚いっとこか」。
駅舎に向けてスマートフォンを構え、シャッターボタンを…。
「いや、ちょっと待てよ」。
「記念写真じゃなくて、ツイートやブログで使おうか」。
再度、シャッターボタンを…。
「いや、ちょっと待て」。
シャッターボタンを押せない。
「おい、お前ら、どけよ!」。
駅舎の前でたむろする、大学生ぐらいの男女5~6人に向かって叫びたくなった(叫んではいない)。
「後で顔にボカシ入れるん面倒くさいから、さっさと切符買って電車に乗れや、ボケ!」。
俺は大声を張り上げる(脳内で)。
結局、学生が立ち去るのを待ってから、シャッターボタンを押した。

撮影した写真をアルバムで確認し、振り返る。
すぐそこには、南海電車の「浜寺公園駅」。
中之島公会堂や中之島図書館を彷彿させるような、豪華で歴史を感じさせられる駅舎が見えた。

「やっぱり、浜寺は特別やなぁ」と思う。
元々、景観が良く別荘があり、今も高級住宅街。
田舎のしょぼい駅舎や、都会でも味気無い駅舎とは風格が違う。
「やっぱり、浜寺は特別なんやなぁ」。
しみじみ思う。

この駅舎は、有名な人が設計し、重要文化財らしい。
「そら、値打ちあるわ」だが、今は高架工事をしているということで、駅舎としては利用されず(仮駅舎が別にある)、カフェやら何やら商業施設になっていた。

ハンドルを押しながら、駅舎(正確には旧駅舎か)に近付き、そして眺める。
「カフェかぁ」。
何となく「コーヒーでも1杯飲んで行こか」という気分になった。
「でもなぁ」。
「でも、柄じゃないよなぁ」。
「う~ん、似合わんことはやめとこ」。

足を止め、またしばらく駅舎を眺めていると、「すぐそこに電車走っているんやから、もう輪行で帰ろか」。
楽をしたい気持ちが、自分を支配しつつあることに気付く。
「あかんわ」。
俺は、焦ってサドルに跨がった。

つづく

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