(727)ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅~何かが落ちる~

大阪市内に入ると交通量は増え、恐怖心が増した。
唯一、「これは救いやな」と思えたのは、道端が広くなったこと。
まぁ、路上駐車の車も増えたので、どっちみち走りにくいんですけどね。

左手でハンドルを握りながら、振り返って後方を確認。
そして、右手でハンドサイン。
路上駐車の車と出くわす度に、それを何度も繰り返していると、面倒くさい上に首が痛くなってきた。

「バックパックからアンメルツをほじくり出して、首に塗ろうかぁ」。
「いやいや。街中でそんなことしてたら、アホと思われるで」。
「そうやなぁ。もう、家まで20㎞もないし、アンメルツは家に帰ってから…でええな」。

そう、もう家が近い。
難波から四つ橋筋を北へ進み、2号線に出ると西へ。
福島、野田を走り抜け、淀川を渡る。
あと15㎞…、10㎞…、8㎞…。
家に近付けば近付くほど、気持ちがたるんだ。

ロードバイクに乗っていると、信号の多さや交通量、天気、風向きなどによって、走りたくても走れない、進みたくても進めないシチュエーションに出くわすことがある(多々)。
そんな時でも、「俺はロードに乗ってるんやから」という意地、プライドで、速度を意識しつつ脚を回している。
が、「速度?プロでもないのに?意地?プライド?どうでもええわ」。
もう家が近いのだ。
あと少しの間、適当にクランクを回し続ければ、布団の上でゴロゴロできる。

尼崎市に入った。
中華屋、商店街の入口、スーパー玉出…。
視界が馴染みある景色に埋め尽くされると、だらけた気持ちがピークに達し、「歩道、走ろか」。

クソほど遅いスピードを更に落とし、歩道に上がる。
「ガン…」。
段差を踏んだ衝撃が、ハンドルを握る両手に伝わった。
と、同時に、「コトッ…」。
何か小さな物が落ちた音。
「何や?」。
気になる。

「今、何か落とせへんかったか?」。
脚を回しながらサイコンに目をやる。
「あるな。サイコンはある。それに、動いてる…ということは、センサーもある。落としてない」。
「フロントライトもあるな」。
上半身を少し捻って、シートポストに手を回す。
「テールライトもあるなぁ」。
「じゃあ、さっきの音は…気のせいか?」。

気のせい。
気のせい。
自分に言い聞かせつつ、ちんたらと脚を回していると、武庫川大橋。
やっと、西宮市だ。

「ロードバイクに乗って、和歌山1泊2日の旅」を終え、数日経ったある日のこと。
玄関の靴箱にロードを立て掛け、ウェスでフレームを拭いていると、「あら?」。
ハンドル(左)に付いているはずのバーエンドキャップが無い。
「いつの間に?」。
手を止めて考える。
「うん」。
思い当たる節はある。
ひとつある。
「あぁ、尼崎で…段差を踏んだ衝撃で…」。

この瞬間、「バーエンドキャップ探しの旅」が始まった。

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