(730)意外に良かった鳴門徳島サイクリングロード-1

「2時間ちょいしか寝てへんで…」。
ロードバイクを押しながら、泣き出したい気分で夜道を歩く。

ネットやTwitterでよく見掛ける、「ローディーの朝は早い」という言葉。
「そんなもん、体に悪いだけやろ?」と、俺は素直に思う。
趣味において、なるべく無理はしたくない。

が、8月22日午前3時前、俺は家を出て、Nさん(50代 男性)との待ち合わせ場所に向かった。
「おはようございます」。
「おはようございます」。
車の前で挨拶を交わし、トランクを開ける。
ロッドケース、クーラーボックス等、釣り道具を右端に寄せ、左端にロードを積み、「さぁ、行きましょうか」。
西宮市(我々の住む町)から鳴門市に向けて出発。
日帰りの旅。

当初の予定では、Nさんの車で鳴門へ行った後、俺はロード、Nさんは真鯛釣り。
お互いの趣味を1泊2日で楽しむつもりでいた。
ただ、天気だけはどうしようもない。
盆休みに決行するはずが、天気予報では雨…雨…雨…。
盆休みが終わってからも、お互いに予定を調整したが、どうしても雨が絡んでくる。

「ぐずぐずしてても何も決まらんわ」。
開き直るしかない。
「1泊2日は延期して、とりあえず日帰りで鳴門に行きませんか?」。
Nさんにそう提案すると、「わかりました。出発は22日の3時で」。

Nさんの予定では、5時の渡船に乗って釣りを始めるため、5時前には鳴門に着かなければならない…と。
それには、西宮を3時に出なければならない…と。
3時とか5時とかって、朝の…でっせ。
毎度毎度のことだが、「勘弁してくれよ」だ。
釣り人の朝の早さは、常軌を逸している。
まぁ、俺は車に乗せてもらう立場、鳴門まで連れて行ってもらう立場なので文句は言えないが、心の中では文句を言いまくった。

高速に乗り、おそらく神戸市に入った辺りだったと思う。
黙って窓の外を眺めていると、ハンドルを握るNさんが口を開いた。
「もうねぇ、毎日毎日、とにかく暇でしてねぇ」。
彼は飲食で働いているため、コロナの影響が直撃し、仕事がかなり暇らしい。
「こんな時期ですけど、いい機会やと思ってね、評判のいいラーメン屋に行きまくったんですよ」。
「ほぉ。いいですねぇ」。
「でもね、行った軒数が増えれば増えるほど、『このラーメン、いまいちやな』って店も増えてね」。
「そういうもんなんですか?」。
「はい」。
「一応、食べログか何かで調べてから訪問してるんでしょ?」。
「はい。人気がある店を調べてから回りました。でもね、食べログやちょっとしたネットの情報だけでは、十分な調査とは言えないんですよ」。
「なるほど」。

「この前ね、嫁と一緒にね、車で讃岐うどんを食べに行ったんですよ」。
「ほぉ。いいですねぇ。讃岐うどんツアー、憧れますわぁ。やっぱり、何軒か回ったんですか?」。
「はい」。
「憧れるけど、うどんって、すぐに腹が膨れません?何軒も回るん、辛くなかったですか?」。
「それは大丈夫でしたよ。早朝に1軒行って、2軒目は昼、3軒目は夕方。それぞれ、それなりに時間を空けて行きましたから」。
「ほぅ」。
「でね、○○ってお店のうどんはコシが強くて、こっちでは味わえない美味さでしたね。あと、××の釜玉。これも美味かった」。
「なるほど」。

明石海峡大橋を渡る手前で「そろそろやばいな…」。
眠気が限界に近い。
「悪いね、Nさん。眠らせてもらうよ」。
心の中でそう呟き、目を閉じる。
と、「この前ね、高知のひろめ市場に行きましてね」。
「はぁ…」。
Nさんは、相変わらず食い物の話を続けたが、もう、俺の頭には入ってこなかった。

つづく

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