(731)意外に良かった鳴門徳島サイクリングロード-2

鼻炎のせいで鼻呼吸が難しく、口のみで呼吸を続けるとすぐに喉が渇いた。
「ペットボトル、どこや…?」。
目を半分開き、左右に手を動かす。

「起きましたか」と、運転席のNさん。
「はぁ、まぁ」。
水を飲みながらスマートフォンで時間を確認。
俺は30分ほど眠っていたようだ。

「今、どの辺ですかね?」。
「淡路島です。南の方まで走りました」。
もう、鳴門は近い。

またぐったりとシートにもたれかかり、次に意識が戻ったのは、「ガチャ」。
車のトランクを開ける音が聞こえた時だ。
Nさんが、釣り道具をトランクから降ろす姿が目に浮かぶ。
「そろそろ渡船に乗るんやな。ってことは、もう5時頃なんやなぁ」。
本来は、俺もロードバイクに乗って走り出す時間だが、もうしばらくだらだらしたい。
引き続き、助手席で横になる。

「ガチャ」。
「カッチャカッチャ…カッチャカッチャ…」。
トランクが閉まり、Nさんが砂利を踏み歩く音が聞こえる。
「いってらっしゃい」。
心の中でそう呟いた後、辺りは静寂に包まれた。

が、「プ~ン」。
耳元で蚊の飛ぶ音。
目を閉じたまま右手をばたつかせ、蚊を追い払う。
しかし…だ。
頭の回らない半眠りの状態でも分かる。
蚊は、この狭い車内にいるのだ。
おそらく、Nさんがトランクを開けた時に入ってきたのだろう。

「近くに蚊がおるわ…」。
そう思うと、急に全身が痒くなってきた。
刺されたわけでもないのに、体のあちこちを掻き始める俺。
眠っているのか起きているのか、自分でも分からないまま時間が過ぎる。

「暑い…。アホほど暑い…」。
手で汗を拭きながら目を開く。
日光が車内に差し込み、嫌がらせレベルの蒸し暑さ。
「死んでまうわ…」。
風を迎え入れたいと思い、ドアを開ける。
が、入ってきたのは蝉の鳴き声。
「余計にしんどなったわ…」。

「さぁ、今から気合い入れて走ろうぜ!」という気分にはなれず(微塵も)、「とりあえず、缶コーヒーでも飲もかぁ」。
車を降り、駐車場の隅にある自販機へと歩いたが、「いつの間に…?」。
自販機は撤去されていた。
仕方が無いので近くのコンビニへと歩く。
前日の雨のせいか、路面の濡れが気になった。

コンビニの前で缶コーヒーを飲みながら考える。
「今から走らなあかん…わけやけど、どこに行こか?」。
真っ先に浮かんだのは高松だ。
ただ、また近いうちに1泊2日で高松へ行く機会があるかも知れない。
なら、高松以外で…と考えたところ、考える作業が面倒に思え、スマホで検索。
「鳴門 サイクリング」と。

「ほぉ、鳴門徳島サイクリングロードってあるんやぁ」。
「32㎞ちょいね。手頃な感じ」。
「スタート地点は、鳴門駅の南東?橋?何となくわかるわ」。

車に戻り、トランクからロードを降ろす。
「さぁ、気合い入れて走ろうぜ!」とクランクを回し、渡船乗り場の駐車場を出る。
日差しのおかげで、路面は随分と乾いたようだ。
都合が良い。
「さぁ、気合い入れて走ろうぜ!」。
「いや、もう1本、缶コーヒー飲んでのんびりしようや」。
邪念に負け、俺は再度コンビニに向かった。

つづく

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