(736)意外に良かった鳴門徳島サイクリングロード-7

雨を含む落ち葉に覆わた路面。
鬱蒼とした木々の中を通る、幅の狭い道。
閉じられた世界の中でクランクを回している気分だ。

と、前方に光が射し、海が見えた。
すぐそこに、落ち葉も落ち枝も無い、走りやすい道が待っているはず…。
そう願いを込めて進む。

願いは通じた。
路面には、少々の水溜まりや湿った箇所もあったが、落ち葉は無い。
信号も無ければ、車も走っていない。
「これやねん。俺が求めてたんわ」。

調子に乗って下ハンを握り、我が儘に脚を回す。
海からの風は、邪魔にならない程度。
ちらちらとサイコンに目をやって、「おぉぉー!」。
時速がカウントアップされる様に興奮を覚える。
が、「ちょっと待てよ」と、もうひとりの自分が言った。

「おいおい、レースに出てるわけでもないのにな、何を死に物狂いになっとんねん?」。
「まぁ、仰る通りですね…」。
「鳴門を走る、せっかくの機会や。景色を楽しめよ」。
「確かに」。
手を上ハンに持ち替え、脚の回転ペースを緩める。

ゆっくりと進み、ボトルの水を飲みながら、右手に広がる景色、畑…畑…畑…に目をやる。
「何を作ってんのかな?」。
「鳴門金時(さつまいも)かな?」。
正解は分からないが、分かったところで、特に興味も無い。

「あ、そう言えば…」。
畑を見ていると、ふと思い出した。
前回、この鳴門徳島サイクリングロードを走った時は、途中、工事している箇所があり、迂回。
今、俺が走るサイクリングロードの公式ルート、堤防道路に出ようと、あの畑の中、農道を進んだ。
農作業に励むおばちゃんと目が合い会釈する、数年前の俺…がこちらに向かって走ってくる。
とまぁ、そんな幻が見えることもなく、「やっぱり走りに集中しよ」。

前を向く。
俺以外、誰ひとりいない。
「いいねぇ」。
「うちの近所にこの道があったら、毎日走るよなぁ」。
「走る度にタイムを計って、自分の成長を数値で確かめる」。
「いいねぇ」。
夢中になってクランクを回している間はそう思った。
が、後になって考えてみると、「すぐに飽きるやろなぁ。景色、変わらんし」。

左手に海。
右手に畑。
代わり映えの無い眺めが続き、「おっ」。
畑の向こうに造船所が見えた。

脚を止める。
「あら?無駄に走ってもうたかも…」。
正しいルートでは、造船所が見える手前で右折し、堤防道路を離れなければならない。
そして、工場や住宅に囲まれた狭い道を進み、川沿いの道へ向かうのだ。

「行き過ぎたか…」。
「ちょっと引き返さなあかんなぁ。あぁ…」。
溜め息。
「あぁ…」。
溜め息。
「いらんことを思い出してもうたわぁ…」。
溜め息。

実は、前に走った時も同じミスをしている。
造船所が見える手前の角。
右折すべき角で、直進。
「行き過ぎた!」となり、Uターンして来た道を戻った。

「俺、ほんまアホやなぁ」。
Uターンし、来た道を戻る。
「あぁ…」。
クランクを回していると、目の前に、俺の後ろ姿が見えた。

つづく

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コメント

  1. トマジ より:

    正解は分からないが、分かったところで、特に興味も無い。

    こういう文章、ほんと好きw

    • krm より:

      本音をストレートに書きました。
      何を栽培しているか?
      まったく興味が湧きませんわ。

  2. ほのすけ より:

    新刊が出るのを楽しみにしてるかの如くこのブログのアップを楽しみにしている。

    • krm より:

      めちゃめちゃ嬉しいお言葉、有り難うございます。
      役に立たない記事ばかりですが、これからも読んでもらえると嬉しいです。