(738)意外に良かった鳴門徳島サイクリングロード-9

畑と畑。
畑に畑。
畑、そして畑。
畑に挟まれた道を進み、田舎の住宅街を抜け、左に曲がって右に曲がって…を繰り返す。
「あかんわ…。曲がりすぎて、方向感覚、失ってきたわ」。
「そもそも、どこに向かってんのかも分からんようになってきた…」。

参った。
大里橋付近が工事中のため、鳴門徳島サイクリングロードの本来のルート、川沿いの道に進めず迂回したが、「こんな、わけわからんことになるとは思わんかったでぇ…」。
サイクリングロードは32㎞ちょい。
大した距離ではないが、「この調子やと、何時間掛かるかわかれへんわ…」。
不安に駆られつつクランクを回す。

「落ち着け。Googleマップを確認しろ」。
「面倒くさいよ」。
「じゃあ、その辺の人に聞け」。
「誰も歩いてへんわ!」。
もうひとりの自分と会話する。
と、「何や、あれ?」。
木深い道に出た。
山の中でもないのに。
「街路樹にしては、木と木の感覚が狭すぎるよな」。
「わけわかれへんわ」。

「わけのわからん虫、飛んで来んなよ。どっか行け」。
左手でブラケットを握り、右手で虫を振り払う。
虫が苦手な俺は、生きた心地がしない。
絶望感を覚えつつ脚を回したところ、「やっとか…」。
どうやら、正しいルートに戻った。
川が見える。

繰り返すが、前に渡った大里橋付近では、工事中のため、迂回する必要が生じた。
ただ、本来は、橋を渡ってすぐに左折。
そして、川沿いの道を進むのだ。
次は大津橋。
橋周辺で工事が無いことを祈る。

と、道の脇に立つ、ひとりのロード乗り。
赤いフレーム。
何やらスマートフォンを操作しているようだ。
ルートを確認しているのだろうか。
気持ちは分かる。

大津橋。
まぁ、どこにでもある普通の橋なので、説明は抜きにして話を進める(興味がある人はWikipediaか何かで調べてみて下さい。俺は調べなかったですが)。
ゆるゆるとクランクを回し、橋を渡る。
そして、左折しようと…。
「またかよ!?」。

川沿いの道を封鎖する立て看板には、「工事中につき まわり道 にご協力願います ㈱ノバック」。
落胆と怒り。
「俺、兵庫県から走りに来たんですわ!わざわざ!特別に通してもらえませんかね!?」と、㈱ノバックに電話を掛けたい。
ただ、掛けてもアホと思われるだけ。
「ぐっ……」。
我慢だ。

「あ~、また畑に囲まれた道を勘で走らなあかんのかよ」。
不貞腐れながら迂回路へ進むと、「お、意外にええやん!」。
綺麗に舗装された広い道に出た。
これまで、狭く荒れた道が続いたせいか、「思い切り走りたい」。
そんな欲求が自然に湧く。

「ついに来たか…」。
「うん、ついに来たね…」。
「TTスペシャリストの本領を発揮する時が…」。
封印を解いた俺は、気合いを入れて脚を回し始める。
ちなみに、TTバイクに乗った経験は無い。
急激な速度の変化を体に感じ、サイコンに目をやると、「はぁ?」。
「34㎞/hのTTスペシャリストが、どこの世界におるねん?」。
自分の行為がアホらしくなり、脚の力を緩める。
と、真横を高速で走り抜く赤いフレーム。
「あ、さっきの奴か」。
「あんたが大将」。

つづく

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