(744)意外に良かった鳴門徳島サイクリングロード-15

月見ヶ丘海水浴場を左手に、長い一本道が続く。
「ついに来たな…。TTスペシャリストの実力を発揮する時が…」と、興奮度が高まった。
ちなみに、俺はTTバイクに乗ったことが無い。

まぁ、そんなしょうもない話はどうでもいい。
「そろそろ本気出そうか」。
気合いを入れて走り始めた…ところで激しい雨。
「勘弁してくれよ…」。
辺りを見回すと、木は腐るほどある。
「木の下で雨宿りしよか」。
考える。

サイコンに目をやると「10:28」。
俺とロードバイクを車に乗せ、鳴門まで連れて来てくれたNさんとの待ち合わせは15時。
この鳴門徳島サイクリングロードは片道32㎞程度なので、往復しても時間に余裕がある。
雨が降り止むまで、木の下なりどこかへ移動し、ぼけっと雨宿りするのもアリだ。
時間的に、何とかなるだろう。

「いや、ちょっと待てよ」。
俺の本能は「走る」だ。
そう、本能。
スイッチが入っている。
例えるなら、手羽先を手にした時、「噛み付く」。
その後、「しゃぶりつく」。
本能がそう訴えかけるのと同じで、今の俺は「走る」。

走る。
もがく必要も無いのに、何故かもがいて走る。
ヘルメットに雨が当たる音、ジャージに雨が染み込む不快感。
それらを自然に受け入れ、「俺は走っている」。
自分に酔いつつクランクを回し、そして満たされた。

が、「ちょっと待てよ」。
精神世界の中で、もうひとりの俺が疑問を呈した。
「おいおい、お前がな、ずぶ濡れになって充実感に満たされるのは自由や」。
「うん、自由。気持ちええよ」。
「でもな、家に帰る時はどうするつもりや?」。
「Nさんの車に乗って帰るよ。15時に待ち合わせてるねん」。
「知ってるわ。そうじゃなくて、ずぶ濡れのままNさんの車に乗せてもらうんか?」。
「あぁ、それはあかんな。Nさんにとっては迷惑やわ」。
「じゃあ、どうすんの?」。
「あらかじめ、お詫びの意味を込めてやな、どっかでカステラでも買って行こか?」。
「いやいや、そういう次元の話ちゃうやん」。
「じゃあ、どういう次元の話なん?」。
もうひとりの俺を相手に話していると、「あら?」。
急に雨が止んだ。

感覚としては、「随分と長い間降ってくれたなぁ…」だが、実際に降った時間は3分ほど。
たまたま、ブログ用に撮った2枚の写真が降る前と降った後で、写真の撮影時間をチェックして判明。
「なるほど…」。
ま、どうでもいいことなんですけどね。

そんなことよりも…だ。
3分降ろうが30分降ろうが関係無い。
ずぶ濡れになった現実と向き合わなければ。
「参ったな」。
「ジャージも15時までに乾くやろか?」。
「分からん。計算の仕様が無い」。
「足かに。ま、俺にはどうすることもでけへんレベルの話やわ」。
「とりあえずやな、Nさんにはカステラ。あと、追加でバームクーヘンでも買って行こか」。

つづく

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