(747)意外に良かった鳴門徳島サイクリングロード-18

「ギャアアアア!」。
叫び声がこだまする。
付近で、女性が痴漢にあった…わけではない。
誰かが車に轢かれたわけでもない。
叫び声の主は、俺だ。

川沿いへ繋がる道を走っていると、道の脇に生い茂る雑草。
クランクを回しながら、何気無く、本当に意味も無く目線を下に向けた時、「ギャアアアア!」。
雑草の中に、黒光りした動く物体。
ラーメン鉢のような大きさ。
「こんなデカいゴキブリがおるんや…?」。
心臓が止まりそうになった。

が、よく見ると亀。
野生の亀を見たのは、生まれて初めてかも知れない。
「うっわ。ほんま、びっくりしたわ…」。
脚を止め、呼吸を整える。
亀は亀で、俺の叫び声にびっくりしたのか、首を引っ込めた。

「お前、この道、車は走れへん思うけど、一応は気を付けろよ」。
亀に話し掛ける。
コミュニケーションが成立したのかどうかは分からないが、顔を出した亀は、のっそのっそとまた歩き始めた。
彼はどこへ向かうのだろうか?

サドルに跨がり、クランクを回す。
少し進んだところで、「自販機も何も無いけど休憩しよか」。
ぼんやりと川を眺める。
が、「はっ!」。
ぼんやりしている場合ではない。
バックポケットからスマートフォンを取り出し、着信とメールの通知を確認。

「よかったわぁ。何もあれへんわぁ」。
休みの日でも仕事関係の連絡が入る可能性があり、俺はそれを恐れている。
極度に。
休みの日…なのだ。
出来ることなら、鬱陶しいことを忘れて趣味と向き合いたい。
心の底からそう願っている。
ただ、取引先には取引先の都合があることも理解している。
「でもね…」。
「でもね…」。
「ほんま、今日だけは勘弁して下さいよ…」。
スマホに語り掛けた後、ジャージのバックポケットに収めた。

ハンドルを握り、前を向く。
と、次の橋、加賀須野橋が見えた。
橋の上には2基のタワーが設置されており、「あれは何やろう?」。
確か、以前、鳴門徳島サイクリングロードを走った時も同じ疑問を抱き、そして調べた。
が、忘れた。
余裕で。

「加賀須野橋」。
「検索」。
情報によると、この橋は「可動橋」であると。
船が通過する際、橋の中心にある可動部が上昇するらしい。
「なるほど」。
「そういうことか」。
ひとつ、知識を蓄えられたようで嬉しい。

ただ、おそらく…だ
この先、いつか加賀須野橋を訪れることがあっても…、俺は2基のタワーを見て、そして疑問を抱くだろう。
「あれは何やろう?」と。

つづく

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