(752)意外に良かった鳴門徳島サイクリングロード-23

13時頃、鳴門の渡船乗り場に着いた。
俺を車に乗せ、鳴門へ連れて来てくれたNさん(50代 男性)との待ち合わせは、15時。
「あー、Nさん、今頃、筏の上で真鯛釣りを楽しんでるんやろなぁ」。
「釣りが終わるまで、あと2時間かぁ」。
「暇やし、ひとりで打ち上げでもしよか」。
「50㎞程度しか走ってないけど、打ち上げ」。
「いいねぇ」。
「飲みに行こ」。

Nさんに借りたキーで車のトランクを開け、ロードバイクを積む。
積む。
積みながら、ふと考える。
俺が待ち合わせ時間よりも早く渡船乗り場に着き、そしてひとりで飲みに行くことを、彼に伝えておいた方がいいか。
まぁ、報告するに越したことはないだろうが、「面倒くさっ」。
ビンディングシューズからサンダルに履き替え、福丸水産へ向かった。

過去にも何度か記事に書いたと思うが、何を書いたのか忘れたので、もう一度書く。
福丸水産は、海鮮バーベキューを楽しめるお店。
売場に並べられた貝やらイカやら何やらかんやらを好きに選び、レジで精算。
コンロが設置されたテーブルで食材を焼き、その味と酒を堪能する…わけだが、俺はひとり。
「お前、ひとりでバーベキューすんのか?」。
「悲しい奴やなぁ」。
これを読んでいるあなたは、今、そう思ったかも知れない。
が、大丈夫。
ひとりでも大丈夫。
バーベキュー用の食材以外にも、定食メニューがあるのだ。

入店し、レジの前に貼られた定食メニューを確認。
「う~ん」。
俺はいつも「天ぷらの盛り合わせ定食」を注文しているが、「キスの天ぷら定食」も気になる。
人差し指を立て(ひとりで来ましたよ…の意)、男性店員に声を掛け、「すみません。『キスの天ぷら定食』をお願いします。あと、瓶ビールと」。

財布を取り出すため、ジャージのバックポケットに手を回す。
と、男性店員より一言。
「今、お刺身定食なら早く提供できますけど、天ぷらは時間が掛かりますよ」。
「はぁ」。
俺には、刺身と米を一緒に食う習慣が無いので、少々待っても天ぷらを食いたい。
「時間が掛かってもいいので、『キスの天ぷら定食』をお願いします。あと、瓶ビールと」。
うん、待ってもいい。
そもそも、Nさんとの待ち合わせまで、時間に余裕がある。

案内されたテーブルに座り、ビールを飲みながら窓の外に目を向ける。
「ええ景色やなぁ」。
「近くに流れてる川は、何て名前の川なんやろなぁ?」。
「ネットで調べたら、すぐに分かるなぁ」。
「ま、面倒くさいから調べへんけどな」。
もうひとりの自分と、どうでもいい会話を交わす。

と、「お待たせしました」。
キスの天ぷら定食だ。
「美味そうやなぁ。記念に写真を撮っとこ」。
スマホのカメラを起動…しようとしたところで、気付いた。
1通のメールに。

「今、どこにいますか?」。
Nさんからだ。
「福丸水産にいます」。
返信。
さて、気を取り直して、キスの天ぷら定食に集中したい。
まずは軽く味噌汁を飲む…ところで、またメール受信。
「こちらは釣りを終え、渡船乗り場の駐車場にいます」と。
「!?」。
時間を確認する。
13時40分。
待ち合わせは15時。

Nさんとふたり鳴門を訪れたのは、この日が初めてではない。
いつも、彼は真鯛を釣り、俺はロードに乗り、お互いの趣味を堪能した後、待ち合わせて一緒に帰る。
が、これまで、待ち合わせ時間よりも大幅に早く釣りを終えたことはない。
「何で今日は早いんや…?」。
焦っていると、またメールが入った。
「今、福丸水産の駐車場にいます。ゆっくり食べて下さいね」。

「いや、無理やろ」と思う。
人を待たせているのに、ゆっくり飲み食いしていられない。
急いで天ぷらと米を頬張り、ビールを流し込む。
そう、ゆっくりと味わっている場合ではないのだ。

が、またNさんからメールが入った。
「ひとりでラーメンを食べに行ってきます。15時に福丸水産の駐車場に戻って来ます」と。
「どっちやねん!?」だ。
「紛らわしい動きをするなよ!」と叫びたくなった。

15時になり、「お疲れ様です」。
Nさんと顔を合わせる。
彼は、何故か満面の笑み。
「何かあったんですか?」。
過去最高の釣果だったらしい。
また、予定よりも大幅に釣りを終えた理由は、「餌が無くなったからです」と。
どうでもええわ。

助手席に座り、ぐったり。
車は我々の住む兵庫県西宮市へ。
「いやぁ、さっきね」。
ハンドルを握るNさんが話し掛けてきた。
「さっき、『三八』に行きましてねぇ」。
「あぁ、徳島ラーメンの名店ですね。今日も美味かったですか?」。
「はい。それでね、モモ肉かバラ肉かを選べるんですけどね…」。
俺は目を閉じ、適当に相槌を打つ。
そして、いつの間にか眠りに落ちた。

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