(759)ロードバイクに乗って撫養城へ、らーめん山東へ~俺と俺~

「う~ん、特に行きたいところも無いよなぁ」。
観光案内板を見上げ、頭を抱える。
俺を鳴門に連れて来てくれたNさん(50代 男性)との待ち合わせは、15時。
現在、10時40分。
待ち合わせ場所である渡船乗り場への距離は、おそらく10㎞も無いだろう。
「どう考えても、早く着きすぎるわ」。
「どっかで時間を潰したいんやけどなぁ」。
「でも、特に行きたいところも無いねんなぁ…」。

悩む。
幸いにも、ぐずぐずと悩む時間はたっぷりある。
が、俺はぐずぐずしているよりも行動に移したい性格(と自己分析)。
「とりあえず、渡船乗り場へ向かおうか」。
サドルに股がり、撫養城を後にする。

渡船乗り場へのルートは、Googleマップをチェックしなくても、だいたいは把握している。
今まで何度も鳴門を訪れることによって得た成果。
得た能力。
まぁ、兵庫県に住む俺にとって、普段の生活には何の役にも立たない能力ですけどね。

頭の中に描かれた地図を開く。
「まずは、撫養川大橋を渡る…と」。
「で、北西へ道なりに進めば競艇場」。
「競艇場まで出たら、渡船乗り場までは真っ直ぐ…やな」。

「ほな、行きましょか。撫養川大橋へ」。
当然、位置は把握している。
それは、鳴門への訪問を繰り返すことで土地勘を得たから…では無く、単に目立つから。
周辺の建物が低いため、撫養川大橋は遠くからでもよく見える。
なかなかの存在感だ。

橋のたもとまで進み、脚を止める。
何年前かは忘れたが、俺は同じ場所で同じ景色を見た。
また、同じ場所で同じ景色の写真を撮った気もする。
「あれは何年前やったかなぁ」。

歩道に上がり、ゆっくりとクランクを回す。
遠くから見た感じでは、高く長い橋に思えたが、実際に登ってみると「大したことなさそうや」。
上ハンを握り、ゆっくりとクランクを回す。

それにしても気になる。
前に撫養川大橋を渡ったのはいつだったか?
3年前?
4年前?
5年前?
分からない。
ただ、数年前の自分に対して、ふと思った。

おそらく、当事の俺は、今の俺と同じように悩みを抱えていただろう。
仕事の悩み。
仕事以外の悩み。
具体的に、それが何かは忘れたが、今の俺と同じように悩みを抱えて生きていただろう。

考える。
当時の俺と今の俺を取り巻く環境。
何か変わったか?
散らかった部屋でひとり居心地の良さを感じ、何となく暮らし、何となく仕事をして、仕事が終われば酒を飲む。
何も変わっていない。
ぼろアパートに住んでいましたが、今はタワーマンションです…ぐらい、極端な変化は難しいだろう。
にしても、何も変わっていない自分と自分を取り巻く環境に、「惨めさ」を通り越して「怖さ」を感じた。

橋を登り切り、下りに入る。
次にこの橋を渡るのは、いつになるか分からない。
いつになるかは分からないが、今の自分とは違う自分であることを祈る。

つづく

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