(776)ロードバイクに乗って津田引田線を走り、鳴門で夜を過ごす~休憩所の蜂~

11号線。
峠を越えると、左手に休憩所が見えた。
馬篠休憩所だ。
トイレに自販機、花壇にベンチ。
高松方面に向かう際、いつもこのベンチでまったりしている。

ブレーキを引き、「今日も寄ってこか」。
ビンディングペダルから左足を外す。
「たまには缶コーヒーでも飲もか」と自販機の前で足を止めたが、「ちょっと待てよ」。
ライド中にトイレが近くなるのは嫌だ。
水分補給は最低限でいい。
ボトルの水以外は飲むべきではない。
自販機の前を素通りして、ベンチに向かう俺。

生垣にロードバイクを立て掛け、辺りを見渡す。
前の道を通り過ぎる数台の車と、掃除のおばちゃん以外、静止した景色。
静かで、のどかで、俺は急に眠くなってきた。

考えてみると、俺はこの日も朝の2時半に家を出た。
早すぎる。
常軌を逸している。
当然、十分な睡眠など取れていない。
釣り好きのNさん(50代 男性)と鳴門に行くと、いつもこうだ。
釣り人を乗せる渡船のスケジュールに合わせて西宮(家)を出発するため、鳴門に着いた時点で俺はボロボロ。

「ちょっと、横になってゆっくりしよか」
「うん、時間に余裕あるしな」
ベンチに腰掛け、後方に倒れよう…とした時、何かが飛んできた。
「何や?」
「虫か?」
虫は、ベンチについた俺の右手、横(約5㎝)に着地。
「何の虫や?」
虫に目を向ける。
と、心臓が止まりそうになった。
「蜂や…」

「これは…ミツバチでもクマバチでもない、ヤバい蜂やな…」
「うん。多分、アシナガバチや」
「嫌やなぁ。スズメバチ級やないにしても、刺されたら痛いらしいなぁ」
「いや、ちょっと待て。ちゃうわ」
「ちゃうんか?」
「うん、アシナガバチとは違う」
「何でや?」
「よく見ろよ。腰のくびれを」
「ほぉ。言われてみたら、確かにキュッっとしてへんな。あと、全体的にごつい感じがする」
「そやねん。だから、アシナガバチとちゃうねん」
「じゃあ、何やねん?」
「スズメバチや」
「んなアホな。スズメバチにしては小さいで」
「アホなんはお前や。思い出せよ。子供の頃に昆虫図鑑を読みまくったやろ?」
「そやなぁ。毎日飽きんと読んでた時期があったなぁ」
「やろ?じゃあ、思い出せよ。蜂の章を」
「う~ん」
「あんな、一般的にやで、スズメバチって聞いてイメージするのは『オオスズメバチ』や」
「そやな」
「だから…や。逆に考えたらな、スズメバチ科にはオオスズメバチ以外にもおるんや」
「なるほど。よう見たら、こいつ、小さいのに近鉄特急みたいな顔してるしな」
「そやろ?」
「うん。じゃあ、これは何スズメバチやねん?」
「俺も専門家ちゃうから、パッと見て分かれへんけど、Googleで調べたら分かるやろ」
「ほな、調べよか」
「アホか?調べてる場合ちゃうやろ?今の状況を理解しろよ」

脳内会話を十分に堪能した後、俺はゆっくりと腰を上げた。
そして、ゆっくりと後ろ向きに歩き、ロードのハンドルを握る。
スズメバチを刺激してはいけない。
生きた心地がしない。
「慎重に…、慎重に…」
自分に言い聞かせながら、ゆっくりとトップチューブに跨がり、ゆっくりと右足をペダルに…。

「今や」
踏む。
慌てて休憩所から脱出。
11号線を西へ、津田の松原へ進む俺。

つづく

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コメント

  1. トマジ より:

    近鉄特急www

    • krm より:

      「近鉄に馴染みの無い地域の人からすると、分かりにくいセリフやろなぁ」と書くのに悩みましたが、思い切ってそのまま書きました。