(783)ロードバイクに乗って津田引田線を走り、鳴門で夜を過ごす~山の牧場~

「多分、あと10㎞ぐらいやろなぁ」
引田を目指し、クランクを回す。

道は平坦。
心が安らぐ。
ここまで、起伏があまり緩やかではない道を進み、少し疲れた。
また、この後、苦手な山が待っている。
今をボーナスステージと思い、しばらくは苦しまないサイクリングを満喫したい。

ハンドルに固定した、ボトルホルダーに手を伸ばす。
確か、フルーツのど飴が入っていたはず。
まさぐる。
と、指先に違和感。
「何じゃ、これ?」
取り出してみると、ごちゃごちゃした黒いケーブル。
「あっ」
数日前、野球中継を聴くために使った開放型イヤホンを、入れっぱなしにしていたようだ。

脚を止め、イヤホンの電源ボタンを長押し。
「おぉ、スマートフォンとの接続もできてるし、バッテリーも大丈夫そうやな」
耳たぶを引っ張り、イヤホンを耳穴にねじ込む。
「OK」
田舎の空気を吸い、景色を目で楽しみ、耳で音楽を楽しみながらサイクリング。
いいねぇ。

それでは、「ミュージックスタート!」といきたいところだが、「ちょっと待てよ…」。
考える。
「俺のスマホに、ミュージック入ってたか?1曲でも」
アルバムアプリを起動し、確認。
リストに表示されたのは…

中山市朗
西浦和也
いたこ28号
木原浩勝
星野しづく
その他…

大物アーティスト達が、その名を連ねている。
今、この記事を読むあなたは、ご存知だろうか?
彼らは、「怪談師」と呼ばれるカテゴリーに属している。
怪談師。
要は、怖い話をする人。
そして、俺は怖い話が大好き。
まぁ、「俺のスマホ、怖い話しか入ってないやんけ…」という現実に気付き、自分を客観的に見て、「こいつ、変わってるよなぁ」と思ったが、いい。
それが逆にいい。
肯定しよう。

では、「怖い話、スタート!」といきたいところだが、「ちょっと待てよ」。
誰の怖い話を選択すべきか、考えなければ。
あまり聞き入ってしまう話だと、走ることよりも話に神経が集中してしまい、事故を起こす懸念がある。
そうだ。
ここは慎重に、聴き慣れた話であり、怖いながらも面白い話を選択すべき。
となれば、これ。
中山一朗氏の「山の牧場」。

それでは、「怖い話、スタート!」と同時に、クランクを回し始める。
前方に漁港が見えた。
漁港。
俺の日常生活において、目にすることの無い風景のひとつ。
この辺りの人には当たり前の景色だろうが、俺にとっては値打ちがある。
ゆっくりと脚を回し、ゆっくりと見晴らしを満喫。
耳元からは、「山の牧場」。

中山一朗氏が語り始める。
「1982年、大学生の頃に、とある山の中にある牧場に迷い込んだ…という体験談なんですけども…」
概要を説明すると、彼は芸大の学生。
卒業制作として映画を撮る。
舞台は、故郷である兵庫県の山深い町。
演技する役者を撮影した後、風景のシーンを撮ろうと、町が見渡せる高台を目指して車を走らせた。
と、馴染みの無い山道。
登る。
道の脇には、「あと30メートル」と白いペンキで書かれたドラム缶。
少し進むと、またドラム缶。
「あと20メートル」と書かれている。
進む。
「あと15メートル」
進む。
「終点」
そこには、山の牧場があった。

勿論、そんじょそこらの牧場ではない。
牛の気配も無ければ人の気配も無い牧場。
違法建築全開の歪な建物。
建物の中は、不可思議で生々しく…と、細かい話はやめておく。
ブログの趣旨とかけ離れてしまう。

が、もう少し。
俺がこの話を知ったのは、学生時代。
20年近く前のこと。
「新耳袋」という本で読んだ。
本の中では、UFOに絡むエピソードもあったが、結局、謎の牧場の真相は分からない。

月日が経ち、法務局で所有者を調べたり、航空写真を確認したり、現地を訪れたり…とネット上で関連記事を目にするようになった。
しかし、理解し難い牧場の正体について、正解を見つけられていないように思う。
こうなれば、いつか俺の手で解き明かしたい。
ただ、怖いので、現地に行くのは嫌だが。

つづく

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コメント

  1. トマジ より:

    読んでましたよ!
    新耳袋!
    全巻通してこの話は異質でしたよね。
    怪談、最高!

    • krm より:

      新耳袋、面白かったですねぇ。
      自分にとっても、山の牧場は特に興味深い話でした。