(785)ロードバイクに乗って津田引田線を走り、鳴門で夜を過ごす~嫌味な看板~

ジャージのファスナーに手を掛け、胸元まで下ろす。
風を受け入れ、サウナのように蒸した上半身を冷やしたい。
が、あまりにも速度が遅いため、風を感じることはできなかった。

「疲れたわ…」
弱音を吐きながらも、ひたすら脚を回す。
「死にたいわ…」
目線は徐々に下がり、トップチューブを見詰めながら進む。
「これ、担いで歩いた方が速いんちゃうか…?」

俺は登りが嫌いだ。
山が嫌いだ。
本音を言えば、適当に休憩しまくって、山の向こう、引田の町に出たい。
が、急がなければ。
この辺りは熊が出るかも知れないのだ。
本当に、勘弁してほしい。

右手をハンドルから離し、グローブで額の汗を拭く。
そして、死に物狂いでクランクを回しながら、またグローブで額の汗を…。

自分を客観的を見て、「頑張ってるよなぁ」と思う。
いつもなら、「頑張ってる自分、大好き」。
心から自分に酔いしれるところだが、今は違う。
酔ってるどころの騒ぎではない。
繰り返す。
この辺りは、熊が出るかも知れない。
本当に、本当に勘弁してほしい。

喉が渇いた。
ただ、ボトルに手を伸ばすのが面倒に思える。
水は後でいい。
登り切ったら、たらふく飲もう。
とにかく、集中。
脚に集中。
脚に集中。

脚に集中…しているつもりでも、サイコンに表示される速度はあまりにも残酷な数値で、心が破裂しそうになる。
やはり、俺の脚力に問題があるのだろうか?
楽を好み、登りを避け続けたせいで、登れる脚になれなかった俺が悪いのか?
いや、違う。
この山の勾配が悪い。
俺は何も悪くない。
すべては、山が悪い。

自分を擁護しつつ、登る。
登る。
と、前方に立て看板。
「何やろ?」
「『熊に注意!!』か?」

立て看板の前を通り過ぎる時、その内容が目に入った。
「徐行 お願いします」
工事でもしているのだろうか?
まぁ、いい。
そんなことよりも、自然と怒りが込み上げてくる。
ムカムカ…。
ムカムカ…。
「あんなぁ、俺はなぁ、必死こいて走っても、スピードは徐行なんじゃ!」

何て嫌みで失礼な看板なのだろう。
早急に撤去することを、俺は要求する。

つづく

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