(162)広島旅行1日目。サドルに跨がる前に、笠岡ラーメンを食べる。

友人である老人Mさんと行く広島県呉市への旅。
1日目、俺は途中まで車に乗せてもらい、適当な所でロードバイクに乗り換え、呉を目指す。
Mさんは、車でそのまま呉に向かい、夕方ふたり落ち合って、酒を飲みに行こうという計画だ。

旅行当日の朝、Mさんが車に乗って迎えに来てくれた。
GTR。
車に興味が無い俺には、その値打ちが全く理解できないが、自慢の車らしい。
ホイールをトランクに詰め込み、車内を汚さないように注意しながら、フレームを狭い後部座席に押し込んで、さぁ出発。

宝塚から高速に乗り、西へ進む。
山に囲まれた山陽道の景色にも飽きてきた俺は、運転手のことなど一切気にせず、眠りに入った。
しばらくして、「笠岡やで」と、Mさんの声に起こされる。
我々は、笠岡に寄らなくてはならない。

岡山県でも随分と西に位置する笠岡市。
この町と、この町のご当地ラーメンである笠岡ラーメンを知ったのは、去年。
確か、夏頃だったと思う。

テレビでプロ野球(広島対阪神)を観ていると、阪神がボロ勝ちしていて、阪神ファンの俺としては痛快。
ただ、広島ファンは、かなりストレスを抱えたのだろう。
カメラマン席の屋根の上から、広島ベンチに向けて、猛烈に野次っているおっちゃんを、テレビは写し出した。

「今の時代に、こんなスタイルで野球観戦する人って、珍しいよな」と、俺は興味を持った。
後で調べると、試合進行を妨げたそのおっちゃんは、現行犯逮捕とのこと。
家は笠岡市、職業はラーメン屋と報道された。
「もう少し掘り下げて調べたいな」と、ネットを見たところ、ご親切にラーメン屋の店名まで公開されていた。

「中華そば 坂本」さんという笠岡のラーメン屋。
随分と評判がいいお店のようだ。
「笠岡ラーメンの老舗」というような表現もあった。
「そもそも、笠岡ラーメン?そんなジャンルがあるの?」と思い、さらに調べる。
チャーシューは豚ではなく鶏、スープは鶏ガラ醤油。
また、会計の際、店員さんに代金渡すのではなく、カウンターの隅にあるカゴに入れる。
お客さんとの信用があって、成り立つシステムだ。

店主のおっちゃんも、精算の仕方も、なかなかユニークだ。
それに、味にも興味がある。
というわけで、今回、このお店を訪れることになった。

高速を降り、しばらく南に進むと、交差点の角に「中華そば 坂本」さんがあった。
古くて小さなお店だが、不思議なもので、ラーメン屋はこういう雰囲気のお店ほど、魅力的に感じられる。
入店し、メニューを見ると、「中華そば(並)」と「中華そば(大盛)」のみ。
「直球勝負してるな」と思いながら、並(600円)を注文。

5分も経たないうちに運ばれてきたラーメンは、一見、どこにでもある昔ながらの中華そばのように見えたが、よく観察し、そして食べてみると、その個性に気付かされた。

まず、スープ。
見た目、やや黒ずんでいたので、「どぎつい醤油の味かな?」と思ったが、少しすすってみると、すっきりとしていて、少しの甘辛さと旨味を感じる。
前日、酒をたらふく飲んでいた俺は、スープが体に染み渡る感覚を覚え、生き返った気がした。
麺は、細目でコシがある。
スープと絡んでおいしいのは当然だが、やや硬いため、よく噛んで食べなくてはいけない。
おかげで、並でも十分な満腹感があった。
鶏チャーシューは、それ単体でもうまい。
「ご飯に乗せて食べてみたいなぁ」とも思った。
他にも、大きめにカットされたネギは、見た目も良く、鶏チャーシューとともに、存在感抜群。

スープを飲みほし、カゴに代金を入れ、駐車場に向かう。
俺は、歩きながら感慨にふけた。
「うまい、安い、早い、腹一杯になれる。文句無しだ」、「それぞれが個性的で、魅力的なラーメンだった」と。

Mさんの車に乗り、国道2号線を少し走る。
「腹一杯やし、達成感も満たされた。もう帰ろうかな」と、一瞬思ったが、そういうわけにもいかない。
「ここで降りますわ」とMさんに伝え、ローソンで降ろしてもらった。
西宮市を出発してから4時間半が経ち、やっと俺はサドルに跨がる。
目指すは呉。
110㎞のロングライド。

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