(793)ロードバイクに乗って津田引田線を走り、鳴門で夜を過ごす~俺の視線~

引き続き、福丸水産にて。
テーブルを挟んで、Nさん(50代 男性)と向かい合う。
瓶ビールをお互いのグラスに注ぎ、「乾杯」。

俺はロードバイクに乗って走り、Nさんは真鯛釣り。
一緒に鳴門へ来たが、着いてからは別行動。
お互い、どの程度疲れているかは知らないが、「お疲れ様でした」。
ビールを喉に流す。

「今日はどこまで走りました?」
Nさんにそう聞かれ、どう答えようか考える。
彼はロードに興味が無い。
興味が無い人に、あまり細かい話をしてしまうと、鬱陶しがられる。
「津田の松原に行きました。往復で80㎞ほどでした」
とりあえず、そう答えながらも「シンプルすぎひんか?」と自己嫌悪に陥る俺。
「他に言い方があるやろ?」
「もっと、こう…、場を盛り上げるような返しがあるやろ…」

互いにビールをちびちび飲んでいると、「牡蠣、もう食べられますよ」。
男性店員の声。
牡蠣を小皿に移し、軽くポン酢を垂らす。
そして、口に含み、「あぁ…、幸せ」。

うどんでも蕎麦でも、カレーでもラーメンでも焼肉でも、世の中には美味いものがたくさんある。
食べながら、「めっちゃ美味い…」と感じさせてくれるものがたくさんある。
が、「あぁ…、幸せ」は限られる。
俺の中では、牡蠣。
肝の刺身。
白子。
痛風まっしぐらですね。

ひとり幸福感に包まれていると、Nさんが話し掛けてきた。
「ホテルはどんな感じでした?」
「あ、まぁ、普通のビジネスホテルですよ。寝泊まりするだけなら、何の不満も無い感じの。それより、Nさん、今晩、車中泊なんですよね?」
「はい、車中泊です。車はね、渡船乗り場の駐車場にね…」
Nさんは語り始める。

「それでね、駐車場の近くにはコンビニもありますし、スーパー銭湯もあってね…」
ビールを飲みながら、気持ち良さそうに話すNさん。
まぁ、話の内容について特に興味は無いが、別に突拍子もない話ではない。
俺にとって、適当に相槌を打てるレベルの話だ。
が、気になる。
車中泊の話よりも、下足串が気になる。

「これ、ほんまに焼けてんのか?」
「焼き始めてから、結構、時間が経ったような」
Nさんの話に耳を傾けつつも、視線は下足串に。
串を回し、焼き加減を確認。
「う~ん、表面は…いけるか?」
「いっとこか?」
醤油を少し付け、口に含む。
「美味いやんけ!」

「スーパー銭湯に行った帰りにね、コンビニで缶ビールを買うんですよ。それでね、寝る準備してから、車の中で飲むビールがね…」
Nさんの話は続く。
が、「ちょっとすみません」。
俺は制した。
「売場に行って肉を買ってきます」

話を遮り、肉を買いに行く俺。
「空気、読めてへんよなぁ」
自覚している。
ただ、肉を食いたい。
せっかくのバーベキューだ。
やはり、肉を食いたい。

串に刺さった牛肉を持ち、テーブルに戻って網の上へ。
「でね、実は、前にも鳴門で車中泊をしたことがあるんでね…」
ほろ酔い気分で話すNさん。
適当に相槌を打ちながら、視線は肉…の俺。

「前にもスーパー銭湯に行きましてね、あそこはね…」
視線は肉。
「これ、ほんまに焼けてんのか?」
バーベキューと焼肉は、勝手が違うのか?
なかなか焼けない…ように思える。

Nさんの話を聞きながら肉を見ていると、表面は徐々に焼けてきた。
ただ、中まで火が通っているのか分からない。
「参ったなぁ」
考えてみると、俺は経験値が乏しい。
バーベキューの経験値が乏しい。
「参ったなぁ」
食べ頃の判断が出来ない。
「う~ん、参ったなぁ」

「それでね、スーパー銭湯の近くに食堂がありましてね。そこも気になってね…」
話し続けるNさん。
向かい合う、俺の視線は肉。

つづく

にほんブログ村 自転車ブログ ロードバイクへ
にほんブログ村

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする