(818)Bianchi ARIAで大阪臨海線を走って墓参り~最悪の魔女②~

田尻スカイブリッジ。
風があまりにも強く、両足で立つのも困難。
ただ、進まなければならない。
橋を渡らなければならない。
この日のゴール、うちの墓まで残り10㎞ほど。
俺は、走らなければならない。

右足をビンディングペダルに乗せて踏み込む。
「パチッ」
サドルに座り、次は左足をペダルに…のタイミングで強い横風を受け、「こけるわ…!」
左足は地面に。
もう一度。
右足で踏み込んで、左足をペダルに…で、強風。
三度目の挑戦で、左足も「パチッ」。
クランクを回し始める。

が、真っ直ぐに進まない。
ゴーーーゴーーー。
ゴーーーゴーーー。
右からの暴風のせいで、俺とロードバイクは左に寄せられる。
ハンドルを強く握って、何とかコントロールしようと試みたが、右へふらふら…左にふらふら…。
「あかんわ…」
「しゃあない…」
「降りよう…」
俺は、ロードに乗って橋を渡るよりも、ロードを押して橋を渡ることを選んだ。

左足を地面に着き、ロードを斜めに傾ける。
そして、右足でサドルを跨ぐ時、また横風。
最悪最強の横風。
ゴーーーゴーーー。
ゴーーーゴーーー。
ゴーーーゴーーー。

10年近くロードに乗っていると、転倒した経験も何度かある。
いつも、「やばい!」と思う間も無く、訳も分からず倒れ、次の瞬間、俺とロードは地面で寝ている。
この時も同じ。
気付けば、横になっていた。

ゆっくり立ち上がり、ロードを起こす。
右足の脛(すね)に痺れを感じるが、まぁ、いい。
そんなことよりも…だ。

よく、ロード乗りあるある…で、「転倒したら、自分の体よりも、車体に破損が無いか先にチェックする」という話がある。
転倒のプロである俺としては、かなり共感できる話だ。
ただ、この時の俺は違った。
自分の体よりも、ロードの確認よりも、もっと優先すべきことが生まれたのだ。
それは、「一刻も早く、この場を離れる」だ。

「こんなとこにおったら、死んでまうわ…」
ハンドルを強く握り、ロードを押して一歩ずつ進む。
ゴーーーゴーーー。
ゴーーーゴーーー。
容赦無く吹き続ける横風。
「う、うわぁ!」
平べったいダウンチューブがまともに風を受け、コントロールが利かない。
俺まで倒れそうに。
「あかんわ…。こんなとこおったら、ほんま死ぬわ…」

重心を低く…を意識し、中腰になってハンドルを握る。
クリートにカバーを付ける余裕が無いため、カッカッカッと音を鳴らし、ロードを押して進む。
足元に安定感が無い上、横からの強い風は吹き止まない。
俺は何度も揺さ振られ、そのたびに恐怖した。

「この悲惨な状況を乗り切るために、何かひと工夫無いか?」
考える。
横風を受ける面積を減らすためにも、重心を更に下げるためにも、もう一段、腰を落とそう。
「OK」
腰を落とし、踏ん張って、踏ん張って、少しずつ進む。
姿勢は、中腰と匍匐前進の中間ぐらいか。
車道を走るドライバーから見ると、「こいつ、何をしてんねん?」だろう。
俺は俺で、「これ、一体、何の競技やねん…?」。
そんなことを考えながら、前を向いた。

つづく

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