(821)Bianchi ARIAで大阪臨海線を走って墓参り~夕暮れの墓地へ~

気になる。
時間が気になる。
クランクを回しながらサイコンに目をやると、「17時過ぎ…か」。
前を向き直し、空を見詰める。
夕方9割、夜1割といったところか。
かなり適当だが。

とにかく、日が沈むまでに墓場へ着き、墓参りを済ませたい。
お化けの運動会など、死んでも見たくない。
気持ちは焦る。
焦りまくる。
が、速度は20k/hちょっと。
「くっそ」
残酷なことに、向かい風と緩い登りが続いた。

「墓場にたどり着いたけど、暗くて怖いので、墓参りは断念しました」
以前、そんな経験をした。
アホらしい。
同じ過ちは繰り返したくない。
と、道の左右に佇む民家やコンビニが目に入り、そして気付く。
「この景色、前にも見たような…」
「あ、墓場、近いわ!」。
あと少し。
もう少し。

大通りを左に曲がると、墓場へと続く通路。
通路脇のフェンスにロードバイクを立て掛け、急いでOTTO LOCK。
念のため、フロントライトを取り、ジャージのポケットに入れる。
後ほど、懐中電灯として役に立つかも知れない。

繰り返す。
俺には時間が無い。
日が沈むまでに、墓参りを終えたい。
SPD-SLシューズが鬱陶しくて仕方無いが、駆け足で墓場を目指す。

カチャカチャ…。
カチャカチャ…。
まだ微かに明るさを保つ、夕日に照らされた墓場。
「暗くなる前に、何とかなりそうやな」
足を止め、胸を撫で下ろす俺。

と、背後から足音。
振り返る。
墓地に向かって通路を歩く男性がひとり。
年齢は、30前後か。
黒のフリースにジーンズ。
「寒くないんか?もっと着込んだ方がええんちゃうか?」
そう思うと同時に、「この時間に墓参りって、この人、ちょっと変わってんのとちゃうか?」。
また、同時に「俺もか」。
まぁ、知らない人だが、それなりに広い墓場の中で、俺以外に人がいるのは、少し頼もしく思えた。

「KRM家之墓」
焦る。
墓石の前で焦る。
風が強すぎるせいだ。
線香に火が点かない。
何度も何度もライターの着火レバーを押すが、火は一瞬で消えてしまう。
「ええ加減、親指、疲れてきたわ…」
「これ、5時間ぐらい掛かりそうやな…」
ふと、何かの広告で見た「線香に火を点ける用のライター」を思い出した。
が、今さら思い出したところでどうにもならない。

ウインドブレーカーとジャケットのファスナーを開け、腹の前に風が通らないスペースを設ける。
「これで何とかなるやろ」
10本の線香に火を点け、墓に供えて、「ご先祖様、今年は有り難うございました。また来年も宜しくお願いします。では」。
駆け足で墓場を去る俺。

サドルに跨がり、辺りを見回すと、真っ暗。
「ま、ギリギリセーフやったな」
一息ついて、クランクを回し始める。
追い風のおかげで、とても心地好い。
ただ、「それにしてもなぁ…」。
気になることがひとつ。
今になって、墓場への通路で見掛けた男性に違和感を覚えた。
「あの人、墓花、持ってなかったよな」
「墓花どころか、鞄も何も持ってなかった」
「普通、手ぶらで墓参り…するか?」
「おかしいよな」
「いや、あの人、墓参り以外の用事で墓地に来たんやろ」
「墓参り以外の用事で、墓地に行くか?何の用事やねん?」
「そう言われると、確かになぁ。やっぱりおかしいよなぁ」
「てか、あの人、ほんまに人やったんかな…?」

つづく

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