(828)朝が苦手な俺だけど、朝っぱらから武庫川サイクリングロードを走りました-1

カリカリカリ…。
スーツ姿に七三分けで、眼鏡を掛けた教師K。
数字とアルファベットを黒板に書いている。
「これはですね…」と振り返り、何かを語り掛けてくるが、話の内容は理解不能。
「どういうことや?」
「このおっさん、酔ってんのか?」
「何の話をしてるんや?」
「黒板に書いてる暗号もめちゃめちゃやわ…」
狼狽しつつ隣の席に目を向けると、坊っちゃん刈りのO。
いつも野球の話で盛り上がるクラスメイト。
「おい、O。あのおっさん、ついに狂ったんか?」
小声で話し掛ける。
が、無視された。

カリカリカリ…。
カリカリカリ…。
意味不明な文字列を書き続ける教師K。
「何や?死ぬまで書く勢いやな…」
そう思いながら、ぼんやり眺めていると、「あ!」。
気付いた。
黒板に書かれているのは、数式。

「なるほど」
数式の意味は何一つ分からないが、俺は数学の授業を受けている。
現に、手元には数学の教科書。
「そういうことか」
状況を把握できた。

とりあえず、教科書を読もう。
教師Kが書く数式に繋がるヒントがあるだろう。
が、ちょっと待て。
教科書の何ページ目を開けばいいのか?
「えぇ…」
授業がどこまで進んでいるのか分からない。
また、俺がどこまで授業を受けたのか分からない。
鞄の中を漁り、数学のノートを開く。
と、白紙。
「どういうことや?」
嫌な予感を覚え、他の教科のノートも開く。
と、白紙。
全教科、ノートは綺麗に白紙。
新品。

頭を抱える。
「そういうことか…」
俺は、1学期の頭から授業を受けていない。
ずっとサボり続けていたが、この日、急に登校した。
その理由も分からない。

カリカリカリ…。
カリカリカリ…。
教師Kが機械のように思える。
いや、それはいい。
どうでもいい。
俺は、自分の置かれた状況とこれからを考えなければならない。
そうだ。
落ち着こう。
落ち着いて考えよう。

1学期の頭から、まともに授業を受けていないということは、留年する可能性がある。
いや、「ある」と言うか「極めて高い」。
大病を患っているわけでもなければ、とんでもないヤンキーでもない俺が留年。
サボり倒して高校を留年。
どれほどだらしない人間なのか?
自分が情けない…を通り越して、死にたい。
また、留年すると大学受験どころではない。
親からすると、「頼むから死んでくれ」だろう。
申し訳無い。
死にます…。

「最悪…」
天井を見詰めながら呟く。
「またか…」
「ちょくちょく見るよな…。このパターン…」
「ほんま、嫌な夢やわ…」
制服を着て家を出た後、高校へ向かう…けど、たまに駅のトイレで私服に着替え、心斎橋のパチンコ屋へ向かう。
そんな高校生活を過ごしたせいだろう。
心のどこかに罪悪感が残り、卒業して何十年も経った今も嫌な夢を見る。
ちなみに、夢には大学バージョン、中学バージョンもある。

こたつの上に置かれたスマートフォンに手を伸ばし、時間を確認。
「まだ5時前かぁ」
「今日は休みやし、もう一眠りしよかぁ」
「でもなぁ、嫌な夢、連発で見そうな気もするしなぁ」
「かと言って、起きたところで、やることあれへんやろぉ?」
毛布にくるまり、脳内で会話していると、「あるで!」。

ある。
そう、やることがある。
俺には、やることがある。
悪夢のおかげで、朝早くに目覚めた。
本当にいい機会だ。

布団から出て顔を洗い、ジャージに袖を通す。
さぁ、行こうじゃないか、朝活に。
ロード乗りらしく、朝活に精を出そうじゃないか。
朝から動くのが嫌いな俺でも、今日は大丈夫。
今日こそは大丈夫。
「オッス!」
気合いを入れ、玄関を開ける。
「寒い…」
部屋に戻る。

が、しばらくゴロゴロしていると、「このチャンスを逃したら、一生でけへんで…。朝活…」。
そんな気分になり、もう一度気合いを入れ直した。
「オッス!」
玄関を開ける。
そして閉じる。
「寒いねん…」
また玄関を…の後、「ぐずぐずしてても仕方無いよなぁ」。
ロードバイクを担ぎ、マンションの階段を駆け降りる俺。

6時過ぎ。
薄暗い2号線を東に進み、武庫大橋へ。
橋のたもとを降りると、川沿いに武庫川サイクリングロード。
さぁ、朝活しましょう。

つづく

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コメント

  1. トマニョロ より:

    おっす!

    からの挫ける一連がツボw