(841)Bianchi ARIAに乗って姫路へ~趣味と自由と仕事~

「確か、この辺に天下一品があったよなぁ」
「閉店するってニュースをネットで見た気がするけど、まだやってるかな?」
キョロキョロしながら、神戸の中心部に向けクランクを回す。

と、背中に振動を感知。
バックポケットに入れたスマートフォンに着信が入ったのだろう。
「あぁ…、嫌な予感…」
遊びの電話か?
仕事の電話か?
いずれにしても、俺は「ロードバイクに乗って1泊2日の旅」と向き合っている。
余計な対応を要求されても、構っていられない。

無視してクランクを回す。
そう、それでいい。
昨年の10月下旬から、仕事でバタバタしていた俺。
それが、やっと2日間の休みを確保できた。
急に友人から「夕方、飲みに行こうぜ~」と誘われても、家に引き返す気は無い。
余裕で断り、予定通り姫路に向かう。
また、仕事関係の連絡だとしても、今日の俺は社会人ではない。
ひとりのロード乗りなのだ。

無視、無視…とは思ったものの、気にはなる。
万が一、仕事の連絡で緊急対応を求められているとすれば…。
ダメだ。
考えるな。
俺は2日間の休みを確保している。
自由に過ごすのだ。

頭を切り替え、脚を回す。
と、また背中に振動が。
「ほんま、しつこいよなぁ…」
俺は2日間の休みを確保している。
自由に過ごすのだ。
無視、無視。

信号待ちの間、やっぱり気になる。
スマホを確認すると、不在着信通知。
「誰やろ?」
仕事の付き合いがある、Yさんだった。

「参ったなぁ…」
Yさんからの連絡といえば、基本的には仕事の話。
「急ですけど、◯◯の件、そちらで対応してもらえませんか?」が多い。
ただ、俺はYさんと飲み仲間でもある。
「今日、早めに仕事が終わるんで、梅田でどうですか?」の連絡も可能性としてはある。
まぁ、仕事の依頼か飲みの誘いかは分からないが、俺は2日間の休みを確保している。
自由に過ごすのだ。
無視、無視。

いや、無視してはならない。
念のため、折り返し電話を掛けるべきた。
Yさんの用件が、仕事でも飲みでも、ちゃんと応答だけはしよう。
そして、「今日は無理ですねぇ。ロードに乗って姫路で1泊するんですよ」と返せばいい。

歩道に上がり、脚を止める。
Yさんに電話。
「お疲れ様です。KRMです」
「どもども、お疲れ様です。Yです。ちょっと、今、いいですか?」
「はい」
「◯◯の件でちょっと困ってましてねぇ、その××の箇所について確認を取らせてもらいたいなぁと思いましてね」
仕事の話か…。

Yさんからの確認は、この日が初めてではない。
いつもいつも、「確認させてもらいたいんですけどねぇ」から始まり、結局、こっちに作業を丸投げしたいだけ。
今回もそうだろう。

「ほんま、ええ加減にしてくれよ…」
Yさんの話を聞きながら、心の底からそう思った。
もう、うんざり。
急に作業を振ってくるのも腹立たしいが、作業依頼は、所属する部署なり会社の上を通してほしい。
直はやめてほしい。
また、土曜の昼間に仕事の電話を掛けてくるのも不愉快だ。
表向き、土日休みの体なので、その点に配慮してもらいたい。
あ、そう言えば、土曜の深夜に電話…もあったな。

腹立たしい。
以前より、「このボケからは一回けじめを取らなあかんなぁ」と思っていた。
ちょっと甘やかしすぎた。
とことん詰めておいた方が、今後のためにもいいだろう。
ガツンと言うつもりで、俺は口を開いた。
が、植え付けられた奴隷根性のせいか、「こちらで対応します!」。
思わず、いつも通りの言葉が。

「本当ですか?そう言ってもらえて、本当に助かります。また近いうちに飲みに行きましょう!おごりますんで!この前のホルモンも美味かったですよね~」
電話の向こうで、随分と機嫌良さそうに話すYさんの声。
まぁ、喜んでもらえたのは嬉しいが、「はっ!」。
忘れていた。
俺は、「ロードバイクに乗って姫路で1泊2日」の真っ最中なのだ。

「Yさん、こちらで対応しますけど、ちょっとね…」
事情を説明し、「楽しんで来て下さいね」と言われたが、楽しみにくい。
納期を考えると、明日から着手したい。
「ってことは、明日は姫路から家まで走って帰る予定やったけど、輪行せななぁ」
結局、俺は2日間の休みを確保できなかった。

つづく

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