(842)Bianchi ARIAに乗って姫路へ~腹がよじれるくらい笑った求人誌の思い出~

右手に見えますのが、阪神の西灘駅。
「とりあえず、ここらでええか」
歩道に上がり、ゆっくりとクランクを回す。
この先には、何度も痛い目に合った左折専用レーンがあるため、車道は走りたくない。

まぁ、ロードバイクに乗って歩道…は気が進まない。
段差や凸凹の路面から突き上げを食らい、いちいち不快感を覚える。
でも、ここは歩道を選択する。
確固たる意思で。

もしも、車道を走った場合、ロクなことがない。
いつもいつも…だ。
三ノ宮に向けて走るたび、直進したい俺を左折に誘うレーンが待っている。
図らずも左折し、道なりに進むと、今回の目的地である姫路方面へ続く道に出る。
うん、出るには出る。
が、車がビュンビュンと飛ばしまくっている道。
何度も怖い思いをしたため、避けたい。

一応、自分の名誉のために記す。
俺は左折専用レーンを直進する手順を知っている。
現に、他の左折専用レーンならいくつもクリアしてきた。
ただ、「ここだけは無理…。何度やっても無理っす…」なのだ。
原因は分からない。

のど飴を口に含み、ママチャリに乗るおばちゃんと同じぐらいのスピードで、のんびりと脚を回す。
綺麗な海や川沿いを走っているわけでもないため、景色に魂を揺さぶられることはない。
ただぼんやりと、何となく町並みを眺めていると、「あっ」。
ふと、思い出した。
「確か、この辺やったなぁ。面接を受けた会社、あったよなぁ」

15年ほど前のこと。
求職中の俺は、家でゴロゴロの毎日。
気が向けば、コンビニで求人誌を買い、缶コーヒーを飲みながらパラパラとめくる。
「何や、これ?」
一応、スーツは着ているが、ホストっぽい髪型の兄ちゃんたちが集まって「イエーイ!」みたいなノリの写真に、キャッチコピーは「営業未経験大歓迎!アットホームな社風です!」。
俺とは人種が違いすぎるため、とてもじゃないが、くつろげそうな社風とは思えない。
次のページには、ホストとキャバ嬢みたいな兄ちゃん姉ちゃんの写真に、キャッチコピーが「年齢不問!学歴不問!経験不問!実力主義!」。
普通に、「ちょっとは問えよ」と思った。

当時、こういう耳障りは良いが「我々はブラックです」と宣言しているような求人広告が多く(今は知らない)、職を探すつもりで買った求人誌を、俺はエンターテインメントとして楽しめるようになった。
特に傑作だったのが、夜の北新地であろう歓楽街に、赤のカウンタック。
カウンタックの前には、パンチパーマに白のスーツを身に纏った男の画像。
ナニワ金融道の「肉欲 棒太郎」に似ている。
画像を見て、「この人が社長か?カタギちゃうやろ?」。
背景には、何やら長々とした文章が。
「ワイは幼い頃、貧乏した」
「ワイは貧乏で、苦労した」
「ワイは幼い頃に誓ったんや」
「親に楽させたい」
「弟も大学まで通わせたるんや」
「ワイは必死になって働いた」
「ラーメン屋でも働いた」
「焼肉屋でも働いた」
「引っ越し屋でも頑張った」
「必死や」
「でもな、あかんかった」
「ワイの夢を叶えたんはな…」
「それはな…」
「浄水器の飛び込み営業や」
「夢が叶ったんや」
「ワイのようになりたいもんは、ワイの元に飛び込んできてほしい」
まぁ、社長の身の上話がほとんどで、最後にやっと新入社員募集…らしくなるが、「こんなもん、誰が応募するねん?」。
そう思い、腹がよじれるほど笑った。
社長は社長でいい。
個性的でいい。
ただ、広告を作ったヤツのセンスが凄まじい。
ネタとしか思えない。

そんな訳の分からない広告の中、目に留まったのが神戸の会社。
「ここはまともそうやな」
面接をお願いし、張り切って訪問。
そこまではいい。
しかし、担当者から「始業時刻は8時ですが、6時半には出社して、みんなで新聞を読みます」と言われ、「アホか?無理」と思った。
本当に、そういう文化は生理的に無理。
結局、採用されず、また、採用されなくて良かったと思う。
ただ、もしも採用され、入社していたら…だ。
今の自分は、また違った自分だったのかも知れない。
少し興味がある。

つづく

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