(857)Bianchi ARIAに乗って姫路へ~君は伝説の「鉄甲舐 義春」を知っているか?~

「また?」
「また迂回?」
「また迂回せなあかんのか?」
海沿いの道を西へ、姫路へ向け走ってきたが、行き止まりにぶつかった。
確か、この少し先には川がある。
川はあるが橋は無い…ため、迂回して内陸部に進み、橋を渡らなければ、先に進めない。

クランクを回しながら、ムカムカ…ムカムカ…。
「面倒くさいよなぁ」
「海沿いにも橋を作ってくれよ」
「まぁ、それに金が掛かるなら、せめてブルーラインを引いてくれよ」
「迂回しやすいように」
文句を言いつつ進路を変え、海沿いの道から住宅街に入る。

ロードバイクに乗って遠出し、その土地の景色を眺め生活感を感じると、俺はいつも妄想する。
「この町(村)の人は、どんな毎日を過ごしてるんかなぁ」と。
こんな感じで↓

———-
大根を引っこ抜く。
男爵いもを引っこ抜く。
引っこ抜く。
引っこ抜く。
視界に入るもの、全てを引っこ抜く。
引っこ抜く。
引っこ抜く。
引っこ抜くたびに、麦わら帽子を被る義春の頬から汗が流れ落ちた。

「よしはるー」
土手の上に、大きな握り飯を抱え、ゆらゆらと歩く母親の姿。
「おっかぁ…」

義春は父親の顔を知らない。
母からは、ただ「漁師だった…」と聞いているが、近くの港で働く連中からは、「一本足の船乗り」。
そう聞いている。
今、生きているのか?
どこで何をしているのか?
宝を探しているのか?
義春には分からない。

現実。
義春が向き合う現実。
病弱な母を楽させたいと、畑仕事を手伝う日々こそが現実。
遊びたい盛りでも、胸に刻まれた「我慢」の二文字。
黙して語らず、握り飯を口に含む。
と、どこから飛んで来たか、麦わら帽子にギンヤンマが止まった。

「早く起きなさい」
母の声に目が覚める義春。
急いで握り飯を食らい、白のヘルメットを被ってサドルに跨がると、「よ~し~は~る」。
母から握り飯を持たされ、熊と死闘を演じながら中学へと向かう。

「おはよー」
「おはよー」
「おはよー」
「キーンコーン カーンコーン」
席に着き、何も書かれていない黒板に目を向ける。
が、気になる。
本当に気になる。
隣の席に座る雪子が気になる。

入学して、まだ間も無い頃。
下校中、自転車に乗る雪子を見た。
田んぼの畦道を、姿勢良くゆっくりと進む雪子。
ヘルメットからこぼれ出た三つ編みも、ゆっくりと風になびき、そして義春の心を揺さぶった。
「将来、オラが部屋を持てば、雪子を女将にしたいズラ!」

今、思い返すと、義春の異常な性癖は、これが切っ掛けだった…のかも知れない。
音楽や体育の授業中、義春は適当な理由を付けて教室に戻り、誰もいない教室で雪子のヘルメットを抱える。
そして、匂いを嗅ぐ。
「あぁ、雪子の香りは、メリットの香り…ズラ…」
次に、舌を出す。
ペロペロペロペロ…。
ペロペロ…ペロペロ…ペロペロ…。
ヘルメットを舐め回す義春。

後の大横綱「鉄甲舐 義春」、誕生の瞬間である。


———-

我ながら「何て下品な妄想なんだろう?」と思う。
が、いい。
それがいい。
個性的でいい。

さて、迂回路を囲む住宅街には、特に何も感じず、妄想を掻き立てられることもなかった。
まぁ、普通に家が並んでるなぁ…と。

つづく

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コメント

  1. トマニョーロ より:

    鉄甲舐 義春www

    名前が秀逸www