(872)Bianchi ARIAに乗って姫路へ~マツケンサンバを歌う~

「クソやなぁ…」
新幹線の高架下歩道を走り始めて、すぐに嫌気が差した。
舗装がガタガタすぎる。
クランクを回すたびに下から突き上げを喰らい、そして同時に強烈な不快感が。
「あぁ…、現実から逃げ出したいわ…」
「とりあえず、休憩しよか…」

サドルから降り、歩道脇のフェンスにロードバイクを立て掛けた後、頭を抱える。
「あぁ…」
どうも納得がいかない。
俺は仕事、仕事の現実を忘れたくて旅に出た。
まぁ、ゴールは姫路なので80㎞程度の旅だが、とにかく…だ。
3ヶ月ほど、ほぼ休み無しで働き、やっとのことで旅に出る機会を得たのだ。
が、不快でしかない道を進む…そんな現実と向き合うことに。
「ほんま、やってられへんで…」
走りたくない。
進みたくない。
しかし、ホテルを予約しているため、クランクを回すしかない。
「シューー」
真上を新幹線が走った。

脚と手、尻に伝わる突き上げ。
本当に鬱陶しい。
本当に気が滅入る。
「この悲惨な状況を打開するにはどうすればいい?」
自分自身に尋ねる。
と、「なるほどな」。
ガタガタの路面など物ともせず、高揚感に包まれながら走る方法があった。
それは、クランクを回しながら「マツケンサンバⅡ」を歌うこと。
「サーンバ ビーバ サンバ♪」
「マ・ツ・ケ・ン サーンバー オレ!」

これといった効果も無く、「また休憩しよか…」。
立ち止まると、右手に自販機が見えた。
シャッターが閉まった工場の、フェンスに囲まれた小さな駐車場。
その隅に佇む自販機。
「コーンポタージュがあったら嬉しいよなぁ」
ゆっくりと脚を回し、自販機に近寄る。
「あるやんけ!」。

自販機の横でコーンポタージュを飲む。
「それはそうと…やな」
考える。
正直、今まで考えたことも無かったが、いい機会だ。
考えてみよう。
「工場の敷地内に設置された自販機を利用するのは、違法ではないか?不法侵入ではないか?」
考える。
考える。
しかし、俺の知識では答えは分からない。
かと言って、スマートフォンで調べる気にもなれず、「どうでもええわ」。
空き缶をゴミ箱に捨て、高架下の歩道に戻って走り始める。

「あぁ…」
下からの突き上げに体力が削られている感覚…が続く。
走るのが辛い。
苦痛だ。
「シューー」
真上を走る新幹線の音を聞くたびに、姫路まで輪行したい気分になった。

つづく

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