(31)暑さと苦しみの思い出がいっぱい。ロードバイクで岡山旅行。-5

2時間ほど横になっただけで、随分と楽になった気がする。
シャワーを浴びてから、飲み屋に行こう。
岡山の町に繰り出して、ビールでも飲んで、自分を労いたい。
しかし、ホテルを出てしばらくうろついていると、足が痛くなってきた。
早く近場にある適当な店に入ろうと、まわりを見回したところ、1軒のラーメン屋があった。
都合がいい。
ラーメンと餃子をちびちび食べながら、ビールを飲もう。

店に入ると、客は1人。
ブチギレているスーツを着たおっさん。
カウンターに座って様子をうかがっていると、どうも、ラーメンと餃子とビールを注文したが、出る順番が気に入らなかったようで、怒り狂っているようだ。
1人しかいない店員の兄ちゃんが、腰を低くしてなだめている。
その姿を見ながら、「悲惨な店に入ってしまったな」と後悔した。

おっさんが落ち着いたら、店員の手が空くだろう。
それまで、メニューをながめながら待とうと思い、目の前に置かれたメニューを手に取り開いた。
「これは期待できひんよなぁ」と率直に感じる。
ファミレスにあるような、写真や絵をふんだんにつかったメニュー。
「味で勝負してる店は、こういう小細工をしないものだぜ」と、口に出しかけたが、心の中でつぶやくことにした。

メニューには、とんこつ、醤油、味噌、塩に台湾ラーメンまである。
ますます「味で勝負していない店だな」と思う。
何で勝負するかブレブレじゃないか。
なんでもかんでも出して、どれかで保険に入ろうという姿勢、俺は認めることができない。
「なんでもええわ」と思い、特に意味もなく味噌ラーメンとビールを注文することにした。
ブチギレているおっさんは、どうやら落ち着いたようで、手が空いた店員の兄ちゃんにそれを伝える。

ラーメンが出てくるまで暇なので、ぼんやりと店内を見回したところ、漫画喫茶を彷彿させる量の漫画が棚にある。
カウンターの脇に、店主の読む漫画や競馬新聞がある、そんな街の中華屋とは次元が違う量だ。
「駄目だ。あらゆる面で味で勝負していない」と俺はうなだれた。

店員の兄ちゃんが味噌ラーメンを持ってきた。
いかにもチェーン店っぽい、見た目、何の印象にも残らないような取るに足らない味噌ラーメンだ。
「せっかく岡山まで来て、こんなもん食わなあかんのか」と思い、一口食った。
「え、うまい」
動揺した。
さっきまでキレていたおっさんをもう一度見て、冷静になって、もう一口。
「やっぱり、うまいやんけ…」
「これ、うまいやんけ!」
俺はガツガツ食った。
ビールも飲んで、満足できるひと時になった。
ありがとう。
岡山の知らん店。
本当にありがとう。

ホテルに戻って、明日のルートを確認する。
今日、往路で痛い目にあったので、別のルートを探し、それを採用することにした。
「今日の失敗は、今日のルートが悪かったのだ」と、その責任を自分に追及することなく、ルートのせいだと結論付けた俺。
明日もなるべく早く起きよう。
朝の早い時間、暑くなる前に距離を稼ごうと心に誓い、ベッドに入った。

※この記事は、2019年1月31日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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