(33)暑さと苦しみの思い出がいっぱい。ロードバイクで岡山旅行。-7

「本当に帰れるのか?」、「本当に、俺は今日中に帰れるのか?」と不安を感じながら足をまわす。
日生駅が見えてきた。
素朴で無駄のない佇まいの駅舎、それを囲む町並みと山、海。
景色を見ていると、気持ちが少しやすらぐ。
時間を見つけて、この町にまた来たい。
涼しくて、俺のコンディションがいい時に、吐くことなくおいしいカキオコを食べたい。

赤穂市に入り、相生市に向かう。
既に、「このままでは、何時に家に着くかわからない」と、尻に火がついた状況である。
今回、赤穂城に寄るのは諦めた。

あぁ、往路で痛い目にあった高取峠が、もうすぐそこだ。
「ここで覚悟を決めなくてはいけない」。
そう思った時、「こんにちは。どちらから来られたのですか?」と声をかけられた。
そのロード乗りは、ヘルメットを被ってアイウェアをかけた容姿なので、顔で年齢は判断できなかったが、落ち着いた声で判断すると、当時の俺より年上、40前後かと思う。
俺とは違い、スリムでスポーツマン風。
紳士的な雰囲気も感じた。
弱虫ペダルのキャラで例えると、まるで、金城真護のようだ。
とっさに、「兵庫県の西宮市です。甲子園があるとこです」と答えたところ、俺の滑舌が悪いのか、風の音で聞こえなかったのか、「え、東京ですか?」と聞き返された。
「そんなに遠くない!」と、俺は少し焦り、「兵庫県です」と叫んだら、「そうですか。よい旅を!」と言いながら、彼は手を振って遠くに消え去っていった。
「この兄さん、格好よすぎるやろ…」。
男に惚れそうになる瞬間だった。

後年、俺は、ロードバイクで再度赤穂に行くことになる。
その時、ふと気づいたのだが、「どこから来ましたか?」「兵庫県です」というこの会話、兵庫県(赤穂市)で交わしたことになる。
なにか不思議な会話じゃないか。

高取峠を越えて、ここから往路とは違う道を走る。
播磨灘沿いのルートで、片側が山、片側が海。
海は絶景。
平坦な道ではなく、小さなアップダウンはあるが、これがとても心地よい。
「ウヒョー」と心の中で叫びながら、登ったり下ったりして。
また、日差しも気にならない時間になってきたので、汗をかくこともなく、走りを楽しむことができた。
少年野球の帰りだろう。
ママチャリに乗り、ユニフォームを着た小学生とすれ違った。
日常的に、この素晴らしい環境、このコースを走っている彼らが、少し羨ましく思う。

予定外の起床時間も住宅街迷走と、立ち上がりは最悪だったが、気持ちに余裕ができた。
俺は、家まで、残り約80㎞の地点まできたんだ。

※この記事は、2019年2月3日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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