(265)武庫川サイクリングロードを走る。~後編~

「ちょっと寒いな」と感じる今の時期なら、トンボは飛んでいないし、わけのわからん羽虫の大群もいない。
そういう意味では走りやすいが、クランクを回してもスピードがでない。
「いきなり向かい風かよ」。
ストレスを感じながら先に進むことを、俺は覚悟する。
武庫川サイクリングロードを何年も走っているが、基本的に、北側のゴールである宝塚市役所辺りは向かい風がえぐい。
ヒルクライムのように感じることもある。
ところが、この日は、南側からスタートした時点で、若干の向かい風を感じた。
季節や時間帯によって、風の向きや強さはまちまちだと思うが、スタートしてしばらくは楽をしたかった。

走り出してすぐに、武庫大橋が見えてきた。
国道2号線で西宮市と尼崎市をつなぐ橋。
普段、特に何も考えず渡っているが、サイクリングロードから見ると、なかなか風情がある。
少し古くも感じ、美しくも感じる。
「これも阪神間モダニズムか?」。
そう思い、家に帰ってから調べてみると、武庫大橋ができたのが90年ちょい前なので、俺の予想は正しいのかも知れない。

俺が走るアスファルトの道の横に、土の道がある。
そこで、ジョギングしている人をよく見掛ける。
「そういや、この前、マラソン大会かなんかやってたよな」。
実は、俺もロードバイクに乗る前に、何度かここをジョギングで走った経験がある。
随分と前の話。
ジョギングしていると、ホームレスが、確か、鬼太郎の家みたいなのを作って住んでいるのを見た。
木の上に家があり、木の下は、清潔間は無いが、洒落たカフェのようにテーブルが少しか並んでいたと思う。
彼は今、どうしているのだろうか?
市に撤去され、どこかに移住したのだろうか?

ここでサイクリング中に転倒した経験が、俺には3回ある。
そのうちのひとつ、何故かいつも砂が積もっている箇所を通る際は、細心の注意を払う。
無事にクリアーし、少し進むと短い橋が見えてくる。
橋のまわりには、かわいい数羽の鴨。
餌を与える人もいる。
ザリガニでも捕まえているのだろうか?
足を水につけ、網も持って鴨のまわりをうろうろする子供。
その様子を眺めていると、「ここはちょっとした癒しポイントやなぁ」と思う。

道幅が広くなった。
見晴らしがいいので、わがままに、がむしゃらにクランクを回せる。
が、少し走ると、鼻炎のため鼻で息ができず、肩で息をする。
道の脇に、ベンチが設置された広場がちょくちょくあるので、「休憩しよか」と一瞬考えたが、空が暗くなりつつある。
ゆっくり脚を回しながら休憩しよう。

「あ、今日は試合が無い日か?それとも、もう終わったんか?良かった~」。
土日になると、右手に見える芝生で、少年サッカーの試合をしているのだが、試合後、チームの用具やらなんやら持った保護者が、道をふさぐように横一列で歩くので、こっちは困る。
「ほんま、勘弁してやぁ」といつも思う。
が、この日は運が良かったようだ。
すいすい進めた。

宝塚市役所を横切り、ゴールへ。
10㎞ちょいの大した距離でもないし、何度も来た場所なので、特に満足感など無い。
それより、空の暗さ。
気になる。

武庫川サイクリングロードは、街灯など無い。
暗くなると、ロードバイクのハンドルに取り付けたライトのみが頼りになる。
ライトに照らされた、道のセンターラインを確認しながら、少しずつ進む。
と、次は明るすぎる、眩しすぎるきっつい区間に入る。
土手の上を走る車のヘッドライト。
それが、ちょうど俺の目の位置に刺す。
走りにくくて仕方がない。

また真っ暗な区間を走る。
無灯火の自転車、ジョギングしている人に気を付けて。

「このまま海の方まで走ろうかなぁ」。
「でも、暗すぎて危ないよなぁ。しかも、途中から、コンクリートの道になるしなぁ」。
暗い中を走り続けると、事故を回避しようと神経を使うので、無駄に疲れる。
気持ちも消極的になる。
「もう、帰う」。
適当なところで土手を上がり、公道を使って、俺は家に向かった。

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