(273)旧西宮砲台跡に向かって走る。

国道2号線をほんの少し西に走る。

「今日は何も予定無いわぁ」と、朝から家でダラダラしていた俺にとって、家にロードバイクがあることは、生活を豊かにしてくれる。
「暇やなぁ」。
「ほな、走ろか」。
そんなノリで、サドルにまたがった。

向かう先は夙川。
明石や神戸に行く際、いつも前を通り過ぎていた夙川オアシスロード。
ネットで調べてみると、サイクリングロードというわけではなく、ポタリングに向いている感じ。
夙川らしい景色の良い道をのんびり走るのもいいですね。
ちょうど、昨夜、寝ていると左足のふくらはぎをつり(半泣きになった)、まだ痛みが残っている。
ゆっくりと走れる環境は、俺にとって都合がいい。
ただ、問題点がひとつ。
「夙川オアシスロードは、あまりに距離が短すぎるんちゃうかなぁ」。
ついでに寄れそうな何か面白い施設が無いか、地図で周辺を調べてみる。
と、あるではないか。
「旧西宮砲台跡!?」。
軍事施設だ。
城めぐりが好きな俺の魂は、かなり揺さぶられた。

JR西宮駅、そして西宮市役所の前を通り過ぎ、夙川に近付いた。
家から10㎞程度の距離なので、あっという間だ。

「綺麗やなぁ」。
僅かだが、紅葉がちらほら見える。
ジョギングをしている人、犬の散歩をしている人もいるが、景色を堪能するようにゆっくり歩く人も目につく。
「ここってちょっとした人気スポットなんやな」と思いながら、俺は脚を回し始めた。

落ち葉を踏む。
景色に目を移し、ゆっくり進む。
と、地面からの突き上げを感じる。
「落ち葉のせいでわからんかったけど、ここって、結構、ガタガタの道なんやな」。
そんなことを考えていると、阪神の香櫨園駅。

さらに南へ向けてゆっくり走る。
もう、ゆっくりすぎて、ママチャリに抜かれる。
それでいい。
歩行者に迷惑を掛けないように、ゆっくりゆっくり。

紅葉に囲まれた夙川オアシスロードが終わり、夕日に照らされた別の景色が目の前に広がった。
「浜の方に来たみたいやな」。
旧西宮砲台跡がある御前浜公園に入るため、車止めを抜けよう。
としたが、バスケットボールを持った中学生ぐらいの子たちが、車止めの前でちょけている。
彼らが通り過ぎるのを待ち、俺は進んだ。

「キャンプでもしてんのか?」。
テントが張ってある。
浜辺でバーベキューを楽しむ家族。
バレーボールやバドミントンをする人たち。
「うわ、俺、こういう光景、すごく苦手」。
さっと旧西宮砲台跡を見て、そそくさと帰ろう。

 「中を見てみたいな」。
だが、フェンスに囲まれているため、無理だ。
ちょっと離れたところから、ぼけっと眺めるしかない。
この砲台について、俺は、第二次世界大戦の時に使われていたものだと勝手に思っていたが、実際は幕末に建てられたそうだ。
完成後、空砲を試し打ちしたところ、内部構造に問題があり、結局、戦闘に使われることなく今に至る。
オチがついていい。
味わい深い。

「目的を達成したことだし、苦手な空気から逃げよう」と、脚を回す。
面倒くさがりながら車止めを抜けて、ちょっとした坂を上がろうとしたところ、バスケ中学生がトリッキーな動きでドリブルの練習をしているではないか。
「また、お前らか!?」。
「横に動かんといてくれ。こっちは抜きにくいやんけ」。

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