うっかりどころの話ではない。
これは、異次元のうっかりだ。
俺は、アホすぎる。
俺が買う気満々のホイールは、チューブラーだった。
ここに来る前に、ネットで調べたはず。
完璧に忘却の彼方へ消え去っていた。
ロードバイクに限らず、おそらく一般的な自転車は、クリンチャーという構造かと思う。
クリンチャーは、タイヤの中にチューブをはめこんでいる。
なので、パンクしても、タイヤに損傷が無ければ、チューブを交換すれば問題無く走れる。
チューブラーの場合は、タイヤの中にチューブを縫い込んだ構造。
いろいろメリットもあるが、チューブがパンクすると、修復が難しいと言うか、面倒。
一度、針でチューブを縫っている人を、サイクリングロードの脇で見かけたことがあるが、俺はしたくない。
面倒くさすぎるよ。
素直にそう思った。
困った。
「チューブラーなんですよね。ちょっと考えます」と店員さんに言い、タイムをとった。
俺なりに色々考える。
「使い勝手が悪そうなチューブラーだが、それを経験することで、楽しさの幅が広がるかも知れない」
「そう、クリンチャーもチューブラーも両方経験できるのは、2倍楽しめる。そういう考え方もできるのではないか」
「それに、チューブラー使ってるなんて格好いい」
「プロっぽい」
「レースに出まくってそう(出たことないけど)」
熟考した結果、「チューブラー以外ありえない」。
俺はレジに向かい、意を決して、もう1度店員さんに言った。
「チューブラーの、あのホイールを買います。タイヤも買います」と。
ついでに、「タイヤのはめ方がわからないので、工賃を支払うから、はめてるところを見せてほしい」と要望も伝えた。
ネットで調べれば自力でできないこともないと思うが、不安を少しはある。
最初はどうしてもプロの人にしてもらいたい。
それを見て学びたい。
リムテープ(ホイールとタイヤをくっつける両面テープ)も買い、作業スペースに案内された。
整備を担当するスタッフの方の作業を、少し距離を置いて、見て学ばせてもらう。
「チューブラーは、テープがしっかり付くまで時間がかかるので、使う前の日の夜にはタイヤ交換して下さいね」
「タイヤ交換のタイミングは、走った距離にもよりますが、半年を目途に考えて下さいね」
気さくなスタッフの方に色々アドバイスをもらい、俺は頷きながら、その作業に見入った。
しばらくすると、話しやすそうな明るい感じの女性店員の方が、俺に声をかけてきた。
「あのホイールを買われたんですね?いいホイールですよ。決戦用ですよ」と。
「決戦用」
この言葉と響きに、俺は魂が燃えた。
今まで一度も決戦したことないけど。
※この記事は、2019年3月8日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。