(104)Bianchiのカーボンロードに乗って、淡路から帰る。-4

淡路でBianchiのカーボンロードを買った帰り、2号線を西に進み、家がある西宮市まで目と鼻の先まで来た。
「武庫大橋を渡れば西宮だ!」というタイミングで、知らんおっちゃんに止められる。

大柄でニコニコ顔のおっちゃん。
第一声は、「えらい頑張ってるなぁ」だった。
「へぇへぇ」と俺は言い、「何者なんだ、この人は」と思う。

「ほんまに大変そうやなぁ。えらい頑張ってるわぁ」
「兄ちゃんは、どこから来たんや?」
おっちゃんに聞かれる。
当時、俺は30代後半に差し掛かっており、「兄ちゃん」というほど若くはないが、気を取り直して答えようとした。
が、しかし、問題がある。

「どこから来たんや?」に対し、何と答えればいいのだろうか?
多分、このおっちゃんは、俺を「旅の真っ最中のロード乗り」と誤解し、声をかけてきたのだろう。
実際、ロードで旅をして、コンビニで休憩している時など、知らん人から「どこから来たんや?」と聞かれることがある(走ってる最中に止められたのは、今回が初めてだ)。

質問に対し、正確に答えた場合、「おっちゃんが、今、立っているポジションの10mほど先にある武庫大橋を渡った所。西宮ですよ」となる。
ただ、そう答えた場合、おっちゃんの夢を打ち砕いてしまう。
期待に応えることができない。
どうしよう。

「落ち着け、俺。何か他の答えがあるはずだ」と、もうひとりの俺がささやいた。
落ち着こう。
よく考えよう。
今日、俺は、西宮からビンディングシューズを履いて電車に乗り、淡路まで行ってロードを買い、今、家まで20分ほどの距離にいる。
そう、ロードに乗ったのは、淡路からだ。
なら、「淡路からです」と答えれば、おっちゃんの期待に少しは応えることができると思ったのだが、それはそれで、さらに問題がある。

この、「淡路」という地名がネックなのだ。
多くの人は、「淡路」と聞いて「淡路島」を想像するだろう。
だが、俺がカーボンロードを買いに行った「淡路」は、「阪急の淡路」なのだ。
大阪の東淀川区にある「淡路」なのだ。
俺の家から、おそらく、たった15km程度の距離だと思う。

「参ったなぁ」と思う。
いかにも人柄の良さそうな顔をしたおっちゃんの期待を前にして、真実を伝えたくない。
期待を裏切りたくない。
このおっちゃんは、高校野球で、自分の出身校でもなく、地元の学校でもないチームを必死に応援するタイプなのだ。
頑張っている若者が好きなのだ。
知らんけど。

武庫大橋の手前で、俺とおっちゃんが対峙したこの状況は、まだ続く。

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