(210)インナーパンツを穿かずサイクリングするなんて、「ありえない」と思う。

ロードバイクに乗り始めた頃、サイクルウェアには、あまりお金をかけなかった。
サイクリングロードを走っていて、「羽虫が目に入って痛いなぁ」と感じると、アイウェアを買う。
「汗だくの手でブラケット(ハンドルの手を添える部分)を握ったら、すべって危ないよな」と思えば、グローブを買う。
そんな感じで、何か困ったことがあれば、その都度、買い揃えていったが、サイクルジャージやパンツは、後回し。
その効果を知らず、また、出費を考えると前向きになれなかったからだ。

ビンディングシューズ(SPD)を買い、その後、SPD-SLに買い換えたタイミングで、「このシューズを履いて、服装は今まで通りのジョギング用ジャージやと、おかしいよな?」。
そう感じ、サイクルジャージとバイカーズパンツを買った。
が、ちょっと待てよ。
バイカーズパンツには、パッドが入っていない。
「さらに出費かよ…」と思いながら、インナーパンツも買いに行った。

インナーパンツ。
メーカーに対して、特にこだわりも無かったので、信用のパールイズミを選択。
「オールラウンド用」、「ロングライド用」、「通勤通学用」と、用途に応じた商品が展開されている。
「使い勝手の良さではオールラウンドなんやろけど、たまに股間が痺れたりするのは、ロングライド中。うん、ロングライド用にしよう」と、それを手に取り、レジに持って行った。
帰ってから、袋を開け、初めて見た時は、「黒いオムツか?」と思った。
股からお尻にかけて、パッドが入り、もこっとしているからだ。
「待て待て待て!これ、穿かなあかんのかよ!」。
「羞恥プレーやんけ!」。
俺は愕然としたが、同時にエクスタシーを感じていた。
と言うのは、冗談で、「インナーパンツ1丁で、外に出るわけじゃない。上にバイカーズパンツを穿くんやから、まぁええやん。なんも恥ずかしくないやん」と、自分に言い聞かせた。

「さっそく、インナーパンツを穿いて、近所のサイクリングロードを走ってみよう!」ということで、穿いてみたが、慣れていないからか、少し違和感がある。
股間がもこもこする感じ。
「まぁ、そのうち慣れるやろ」と、気にしないように心掛け、サドルに跨がる。
いつものサイクリングロードを、いつも通りに走る。
インナーパンツのおかげで、いつもより速く走れたということはない。
ただ、パッドのおかげか、「あぁ、ちょっと尻が痛い…」と感じることは無かった。

「インナーパンツを穿いて、ロングライドしてみよう」と、暑い中、和歌山方面へ130㎞ほど走った。
これまた、特に速く走れたわけではないが、パッドのおかげで、地面からの突き上げが軽減され、いつもより快適に走れた気がする。
また、結構な汗をかいたはずなのに、インナーパンツのウエスト部分以外は、さらっと乾燥していて、それも快適に感じた理由のひとつだろう。

股間のもこもこにも慣れ、いや、むしろ、もこもこしていないとしっくりこない体質になった。
そんなある日、急に職場に行かなくてはならない事態に直面する。
「職場までは、電車に乗るほどの距離ではないし、かと言って、歩いて行くと時間をロスするし…」というわけで、ロードに乗って出勤しよう。
ただ、いちいちサイクルジャージに着替えて、バイカーズパンツを穿いて、グローブをして…は面倒くさい。
「基本、今のまんまの格好で、ロードに乗って出勤したらええわ」と、ジーパン、Tシャツ、右足の裾をバンドで縛った状態で、俺は家を出た。

「痛い…」。
「全然、快適ではない…」。
インナーパンツを穿かず、久々にロードに乗った感想だ。
「俺は間違っていた…」。
心の底から、そう思った。
今の俺は、まるで社会通念のように、サイクリングする時はインナーパンツを穿いている。
が、しかし、ロードを買う前、クロスバイクに乗っている時から、インナーパンツを穿くべきだったのだ。
たった3,000円から4,000円程度のインナーパンツ。
これを穿くことで、無駄な痛みを感じなくてすんだのに…。
「今さらどうしょうもないけど、なんか自分自身に対してむかつく!」。
そんなやりきれない気持ちを抱えながら、俺はクランクを回し、会社に向かった。

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