(245)チューブラータイヤを交換しなければ。-2

パンクして眠ったままのF4R。
俺がすべきことは、チューブラータイヤの交換だが、今まで使っていたVittoriaのCORSA CXは、ウエムラサイクルパーツにも、シルベストサイクルにも置いていなかった。
「手元に届くまで何日かかかるけど、ネット通販でええか」と思い、調べてみたが、「取扱終了」の文字を目にする。
「参ったなぁ」。
がっくりしつつも、俺なりに考えてみる。
俺が買った時のCORSA CXは、激安だった。
おそらく、型落ちして特価品になっていたわけで、そのタイミングでVittoriaのラインナップがリニューアルされたはず。
と、言うことはだ。
CORSA CXは、売ってないのが当たり前?
「いやいや、諦めてはいけない。ある所にはあるやろう」。
そう自分に言い聞かせ、Y’sロード大阪に行くことにした。

今週の月曜日。
体育の日だ。
電車に乗って梅田に出て、乗り換えをするために、地下鉄四ツ橋線の西梅田駅に向かって歩く。
と、視界の端に、手を振る人がいるではないか。
俺は、一瞬反応したが、目が悪いせいで誰かわからない。
それに、下手に手を振り返すと、こっちが恥をかく可能性もある。
例えば、前から歩いてくる知らない人Aに挨拶をされ、こちらも挨拶を返すと、実は、Aが挨拶した対象は、俺ではなく、俺の後ろを歩く知らん人Bだった…。
といった恥ずかしい経験を、俺は何度も繰り返している。
「同じ轍は踏まないぜ!」。
手を振る人を徹底的に無視し、俺は西梅田駅へ急いだ。
が、左肩を掴まれ、「ドキッ」とする。
振り返ってみると、そこにいたのは、近所の飲み友達。
解散から30年以上経とうとも、今も変わらず心からBOOWYを愛す男(以下、BOOWYさん)ではないか。

「なんで無視すんの?」と半笑いのBOOWYさん。
「いえいえ、自分は視力がよくなくて…。それに、BOOWYさん、雰囲気変わりましたやん」。
前にふたりで飲んだのは、確か5月。
坊主頭をちょっと伸ばした、ラフな感じの髪型だったのに、5ヶ月ぶりに会ったら七三分け。
「イメチェンしすぎやで。ややこしいわ」と、心の中で呟く俺。
「とりあえず、今からちょっと飲みに行こか?」。
飲みに誘われるのは素直に嬉しいが、BOOWYさんの「ちょっと飲む」は「ちょっと」ではない。
何軒も回って「ちょっと飲む」を繰り返すので、結局、結構な量を飲むことになるし、何時に終わるかわからない。
「参ったなぁ。さっさとチューブラータイヤ買わなあかんのに…。こんな所に伏兵が潜んでいるとは、想定していなかった…」。
BOOWYさんは、そんな俺の心境を察したのか、「今から待ち合わせ?何か予定あんの?」と聞いてきた。
「いえ、待ち合わせは無いんですが、俺、今から堺筋本町の自転車屋に行って、買い物しようと思ってて」。
「じゃあ、ここらで飲んでから堺筋本町行ったらええやん」。
「わかりました」。
ふたりで北新地の方に向かって歩く。
俺は、自分が振り回されている気がしてならない。
「安くてうまい店あるねん。レバー好き?」。
「はい、好きですよ」。
「じゃあ、満足できると思うわ」。
「BOOWYさん、あの、今日は祝日ですが、その店開いてるんですかね?」。
「お、ええこと言うてくれた!祝日やったら、閉まってるわ。また別の機会に飲みに行こう」。
そう言い残し、BOOWYさんは去って行った。

僅か5分程度コミュニケーションを取っただけで、俺は随分と疲れた。
「それにしても、恐ろしく自分中心な人やな…。逆に感心するわ」と思いながら、ひとり佇む。
ふと、周りを見回すと、自分がウエムラサイクルパーツに近い位置にいることに気付いた。
「もう、堺筋本町まで行くん面倒くさなったわ」。
結局、ウエムラサイクルパーツで、チューブラータイヤを買う。

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