(797)財布、アイウェア、ジャージ、ソックス…そして帽子。adidasの思い出。

そろそろお開きですね…というタイミングで、友人たちがポケットや鞄から財布を取り出した。
先日の飲み会でのことだ。
俺もポケットから財布を取り出す。
友人たちはヴィトンだなんだとブランド物の財布。
俺はadidasの財布。
「それ、小さくて可愛いねぇ」と話題に。
もう、俺のあだ名が「adidas」になる勢い。

ちょっと待て。
弁解させてもうと…だ。
何も、ビジネスシーンを含む日常の全てにおいて、adidasの財布を使っているわけではない。
俺にとって、adidasのコンパクトな財布は、飽くまでサイクリング用の財布なのだ。

もうひとつ弁解。
この日、飲み会の前に時間があったので、ロードバイクに乗って西宮と尼崎をうろうろした。
一応、走る前に「何か買い物するかも知れへんなぁ」と、普段使っている革財布からadidasの財布に中身を移し替えた(次第です)。
で、帰ってから飲み会に向かう際、「また財布の中身を移し替えなあかんのか。面倒くさっ」と思い、サイクリング用であるadidasの財布で飲み会に挑んだ(次第です)。

まぁ、いい。
それはいい。
飲み会において、adidasの財布について突っ込まれた際、ふと思った(ここからが本題)。
「そういや、俺の周りにはadidas多いなぁ」と。
サイクリング用の財布にアイウェア、ジャージ、ソックス。
ジョギング用のジャージもadidas。
「あっ」昔の記憶が甦った。
adidasに対する憧れとトラウマ。
それが俺にはある。

小学校、確か、2年の冬だ。
懇談会から帰った母親は、機嫌が良かった。
理由は、「先生に通知表を見せてもらったんやけど、あんた、成績良かったで」。

当時、俺の成績は、「図工」に関しては常に5(5段階評価)。
だが、これは親から褒められない。
認められない。
「図工」、「体育」、「音楽」は、親にとってどうでもいい教科。
評価の対象は、「国語」、「算数」、「社会」、「理科」。
この4教科のうち、いくつ「5」があるか…が重要。
で、たまたまだろう。
この時、「算数」と「理科」が5だった。

「何か買ったろか?欲しいものある?」
母親にそう聞かれ、俺は瞬時に答えた。
「紺色の帽子が欲しい!」
「うん、分かった」

まだアニメが始まる前だったと思うが、ジャンプを通して、「キャプテン翼」にはまっていた俺。
特に、若林源三(GK)が好きで、百貨店かどこかでadidasの帽子を目にした時、反射的に興奮。
「若林のや!これ、欲しいなぁ」
「赤より紺の方が格好ええなぁ」

「ついに…なれる…」
「ついに…俺はなれる…」
「ついに…若林になれる!(サッカーしたこと無いけど)」
終業式が終わり、走って帰る俺。
頭の中は、母親と高島屋か大丸に行き、adidasの帽子を買ってもらうこと…で、いっぱい。

玄関を開け、「ただいま~」。
ここから悲劇が始まる。
「お帰り」
こたつに入り、テレビを観ていた母親が振り返って「買って来たよ」。

「何を?」と思いつつ、テーブルの上に置かれた茶色の紙袋に目をやる。
「何やろ?鯛焼きでも買って来たんか?」
紙袋を手に取り、中を覗くと、紺色の帽子。
紺色の帽子…。
紺色の帽子だが、ミッキーマウスの刺繍…。

「何じゃこれ!?」
恐ろしいギャップ。
ついさっきまで、「若林になれる」と妄想していた俺にとって、「現実=ミッキー」はあまりにも残酷な仕打ちに思えた。
「…」
「…」
状況を理解するのに少々の時間を要した後、血管がぶちギレそうになり、「ちょっと、俺、こんなんいらんわ!」

と、こたつに入ってテレビを観ている母親が、また振り返り「買ってもらったのに、そんな言い方は無いやろ!」。
ちょっと待て。
誰も頼んでいない。
「ミッキーの紺色の帽子を買ってくれ」など、誰も頼んでいない。
頼むわけがない。
そもそも、物心付いた時から、有り難がってミッキーを観た記憶が無い。
ミッキーに興味が無い。
が、ちょっと待てよ。
俺は「紺色の帽子が欲しい」と母親に伝えたが、「adidasの紺色の帽子が欲しい」とは伝えていない。
「あぁ…」
落ち度は俺にある。

そう、落ち度は俺にある。
頭では理解できる。
また、母親が主張する「買ってもらったのに、そんな言い方は無いやろ!」も、頭では理解できる。
ただ、感情が受け入れない。
あまりに残酷すぎる現実を。

その後、仕方無くミッキーの帽子を被る日々を過ごすうちに、いつの間にか愛着が湧く…こともなく、しばらくして、5つ上の従兄弟からお古のadidasを貰い、幸せに暮らした。

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