(862)負の連鎖~ロードバイクに乗れない4日目-1~

4日目その1

何時かは分からないが、おそらく深夜。
「あ…、許して…」
布団の中で悶絶する俺。

左足首が痛い。
痛すぎる。
立つと激痛が走るのは認識していたが、横になって眠っていても痛みを感じるとは。
「確実に悪化しとんな…」

既に、ロキソニンSを貼っている。
他にできることは、酒を飲んで酔っ払い、痛みを誤魔化す…か。
いや、ダメだ。
俺は病人。
微熱ではあるが、一応、風邪を引いている。
酒はよくない。
なら、どうすればいい?
痛みから解放されるには、何をすればいい?
考えながらもがいていると、「はっ!」。
左足首を曲げることによって、痛みを感じない角度を見出だした。

仕事でも何でもそうだ。
例え大きな壁にもほころびがあり、付け入る隙がある。
それを考え、クリアする。
俺は左足首に痛みを感じない角度を見出だし、克服した。
「前から思ってたよ。お前は只者じゃない…と」
そう自分に語り掛け、また眠りに落ちる。
と、「いや…、許して…」。
寝返りを打つたびに激痛が走った。

何だかんだと昼前まで寝たり起きたりを繰り返し、「さぁ、どうしょうかぁ?」。
考える。
いい加減、何かしっかりしたものを食べた方がいい。
風邪薬は無いが、食べることで少しでも回復したい。
ただ、困った。
相変わらず、食欲が無い。

普段なら、仕事帰りに「飲みに行こかぁ」、ロードバイクで走った後に「美味いもん食おかぁ」。
そんな欲が自然に湧くが、今の俺は飲みたくも食いたくもない。
おそらく…だが、仕事なり趣味なり、ある程度頑張らないと、欲が出ないのだろう。
考えてみると、昨日から俺は寝たきり。
体力を使うことも無ければ、達成感を得るイベントも無かった。

「それでもなぁ、無理にでも食っておいた方がええよなぁ」
「うん、食うべきやなぁ」
枕元に手を伸ばし、スマートフォンを起動。
アルバムから、1枚の画像を選択。
「これで食欲が刺激されるやろう」

画像は、神戸三宮「SAVOY」のカレー。
俺は神戸中のカレー屋を食べ歩いたわけではないが、「神戸のカレーといえば、やっぱりここやなぁ」と思う。
辛いものが苦手な俺でも十分すぎるほど美味しく食べられるし、注文してから早いのも良い。
というのも、メニューが非常にシンプルで、「ビーフカレー」と「玉子」、「ビール」しか無いのだ。
入店すると、カレーのサイズ(大中小で値段は同じ)を聞かれ、席に着けばすぐに提供される。
卓上の福神漬けやラッキョウを乗せ、「あぁ、美味いわぁ…」。
本当に美味い。
いつも俺は「中」を頼むが、いつの日か腹を空かした時に訪れて、「大」を注文したいと思う。
が、今の俺には「小」も無理だ。
画像を見ても、食欲は湧かず。

ぼんやりと天井を見詰めながら考える。
「この連休って、何やったんかなぁ?」と。
担当していたプロジェクトを終え、そして得た2日間の休み。
せっかくの休みなのに、左足首が腫れて歩けない上、風邪を引いて寝たきり。
「アホらしっ…」
「明日も寝たきりか…」
「はぁ…」
溜め息をつくしかない。
が、ちょっと待てよ。
明日は仕事だ。
明日、出社しなければならない。

落ち着け。
今すべきことは何か?
それは、風邪を治すことだ。
会う人、会う人に風邪を移してはならない。
そうだ。
なら、俺は風邪薬を飲まなければならない。
が、家に薬が無い。
ドラッグストアへ買いに行こうにも、左足首が痛すぎて歩けない。
しかし…だ。
足を引きずってでも薬を買いに行き、風邪を治す努力に励むべきではないか?
パチパチパチパチ…。
パチパチ…パチパチパチパチ…。
脳内で、数千人の俺がスタンディングオベーション。

方針は決まった。
左足首が痛かろうが痒かろうが、俺はドラッグストアへ行き、風邪薬を買う。
ただ、立てば激痛が走ることを理解しているため、立つ度胸が無い。
「立て…」
「さぁ、立て…」
「立って立って、立ちまくれ!」
何度も自分を鼓舞しているうちに、夕方になった。

「あかんわ。これじゃ、何も変わらん」
「うん、何も進まん」
とりあえず、余所行きのジャージに着替え、玄関まで四つん這いで移動する。
なるべく左足首にダメージを与えないようスニーカーを吐き、俺は勢いよく立った。

「ギャー!!」
立っているだけで、左足首が恐ろしく痛い。
咄嗟の判断で右足に体重移動し、痛みを少し緩和させたが、先が思いやられる。

ダメだ。
こんなところで負けてはいらない。
そうだ。
勝負はこれからだ。
玄関の鍵を開け、ドアノブを握る。

覚悟はいいか?
この先、一歩進むごとに激痛と向き合うことになる。
大丈夫。
覚悟を決め、気合いを最大値まで高めたところで、俺はドアノブを回した。
「次鋒 レオパルドン いきます!!」
「グオゴゴゴ」

つづく

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コメント

  1. より:

    ノーズフェンシングで逝くパティーンですやん…